研究課題/領域番号 |
24656362
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 花園大学 |
研究代表者 |
高橋 康夫 花園大学, 文学部, 教授 (60026284)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 琉球 / 建築史 / 都市史 |
研究概要 |
1.既往調査研究および現存建築遺構の再評価: ①近代における沖縄建築調査の再評価:田辺泰『琉球建築』(座右宝刊行会、1937年)、伊東忠太『琉球―建築文化―』(東峰書房、1942年)、鎌倉芳太郎『沖縄文化の遺宝』(岩波書店、1982年)などから、現在では入手不可能な情報、また琉球建築史についての概説や見通しなどの情報を獲得し、詳細に分析する作業を実施した。②現存建築遺構の再評価: 戦後に実施された民家、伝統的建造物群、近代建築、近代化遺産の調査報告を分析し、琉球建築の特質を把握する作業を行った。 2.「琉球建築史」の枠組: ①関連諸分野の時代区分論: 近年の琉球史研究、とくに考古学と歴史学の時代区分論について、その構想、枠組、変化を検討した。②琉球建築史の時代区分論: 上記の作業と連動させて建築史学・都市史学の視点から独自の時代区分の仮説を組み立てる作業を行った。 3.主要な建築類型および寺院・王城・集落・都市の空間構成の変遷過程: ①「琉球建築史」構築の軸となる首里城正殿について、考古学の調査成果や冊封使の使琉球録・使琉球詩を分析し、14世紀から戦前に至る変遷過程の把握に努めた。②住まいと集落・都市:八重山の特異な集落や本島の集落について考古学資料・文献資料を収集し、住まいと集落の空間構成と変遷を捉える作業を行い、次年度以降におけるグスクや寺院・王城・集落・都市についての考察の準備とした。 4.中国・朝鮮・日本との建築文化の交流: ①朝鮮との交流: 紀年銘をもつ高麗瓦についての既往研究を整理し、どのような建築に高麗瓦が葺かれたのか、建築様式とその伝来、瓦匠や大工の問題を検討した。②日本との交流: 浦添グスクを拠点とした察度王朝時代における建築文化の交流の一事例として、頼重の護国寺創建伝承を手がかりに教の建築の伝来を推定する作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 前近代東アジア(日本・琉球・朝鮮・明・清)の建築・都市中心の歴史年表を作成したことによって、琉球建築史創成作業の全体的な見通しがよくなったこと。 ② 首里や那覇を描いた絵画史料を整理するなかで、首里・那覇のランドマークとなるような建築群の特徴が見えてきたこと。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の研究実施計画に基づき着実に進めるが、琉球建築史の創成を琉球国内のみならず、東アジア文化圏とも呼ぶべきに拡大して捉える必要があることをいつも念頭に置いて、実地調査や資料収集にあたりたい。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点などはない。
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次年度の研究費の使用計画 |
① 当該研究費が生じたのは、研究実施計画の初年度として既往調査研究および現存建築遺構の再評価、また「琉球建築史」の枠組に関する関連分野の調査などの基本的な情報の整理と分析に重点を置くことになったため、人件費・謝金やその他の支出などがなかったことによる。 ② 当該研究費は図書費や旅費に充当し、25年度の研究実施計画において中心的な位置を占める実地調査や資料収集などの研究作業をいっそう強化する。
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