1.「琉球建築史」の枠組: ①近年の琉球史研究、考古学と歴史学、国文学の時代区分論について、その構想、枠組、変化を把握する作業、②また、建築史学・都市史学の視点から独自の時代区分の仮説を組み立て、充実する作業を継続した。 2.主要な建築類型および寺院・王城・集落・都市の空間構成の変遷過程: ①首里城正殿ほかの建築についてその様式、平面などを考察し、また沖縄本島のほか奄美大島や八重山も視野に入れて、グスクの変遷過程を追求する作業、②自然・歴史・文化のなかで住まいと集落の空間構成と変遷を捉え、また典型的な集落と首里・那覇の比較する作業、③仏教建築、神社本殿、道教の廟などについて、東アジアにおける建築文化の交流を視野に入れ、その様式と変遷を検討する作業、④東苑・同楽苑・南苑(識名園)の空間構成とその変遷について、庭園史の成果を参照しつつ、検討する作業を継続した。 3.中国・朝鮮・日本との建築文化の交流: 琉球王国成立以降について、〈双対性〉の観点から、日本および中国との交流を検討する作業を継続した。前者では熊野信仰と神社建築、また住宅様式の伝来と実態、後者では道教の建築、華僑の住宅様式の伝来と実態の解明を試みる作業を行った。また紀年銘をもつ高麗瓦の既往研究を再検討し、どのような建築に高麗瓦が葺かれたのか、建築様式とその伝来、瓦匠や大工の問題を再考察した。 4.琉球建築の評価――固有性と普遍性の視点から: 継続して、①首里城正殿・南殿などの特異な平面形式や重層構造を生んだ要因、また琉球の建築の根底にある「グスク」について、国語学や考古学などの成果を踏まえ、建築史的な意義を再検討し、②東アジアさらに世界のなかで琉球建築を位置づけることを試み、琉球と日本、中国、韓国などの建築史との比較を通じて琉球建築の普遍的な特性を把握する作業を行った。
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