主な研究対象とする1920年代から1960年代のモダニズム建築のうち、特に史的評価が高くまた保存状態の優れた事例について、その保存あるいは改修について報告・分析する文献資料を収集・整理、国内および海外調査に必要な準備資料を作成した。同資料に基づき、オランダ、日本における主要事例について現状を確認・調査すると共に、保存・再生にいたるまでの経緯など事実関係を知りうる資料・文献を現地調査した。 当該年度は、国内における最近の保存改修事例を中心に見学・調査、分析・考察を行った。東京、迎賓館赤坂離宮では、明治42年、片山東熊設計により東宮御所(後、赤坂離宮)として建てられ、戦後、迎賓館として村野藤吾によって改修された経緯についての調査状況を確認した。平成18年の大規模改修工事後、現在も継続している貴重な修復現場を見学調査した。また、東京駅丸の内駅舎およびステーションホテルを内覧、約10年間にわたる同修復・保存プロジェクトの経緯について調査、重要文化財の保存・活用の在り方について分析・考察した。 最終年度として、初年度からの当該年度までの調査資料のデータベースを統合し、1920年代から1960年代までのオランダを中心とした欧米におけるモダニズム建築の保存・再生の事例調査結果を国、年代ごとにまとめ、日本の調査事例と比較検討した。加えて、モダニズム建築の保存・再生に関する国や自治体の制度のあり方、モダニズム建築に関する学術団体DOCOMOMOの活動のあり方、既往研究の研究方法など、モダニズム建築の保存・再生を取り巻く環境についての調査結果をまとめ、分析・考察のうえ、総合的にモダニズム建築のオーセンティシティおよび保存・再生の問題を明らかにした。
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