研究課題/領域番号 |
24656368
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 明保 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20581995)
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研究分担者 |
下山 淳一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20251366)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超伝導 |
研究概要 |
二ホウ化マグネシウム(MgB2)は液体ヘリウムを冷却に要さず、比較的高温度(~20 K)で動作可能な次世代超伝導材料である。本研究では、MgB2線材の実用化への最大の課題の一つである超伝導相の高密度化を検討している。現状のMgB2長尺線材作製法の主流であるin-situ法は、反応時にMgが溶融・拡散するために原理的に空隙が生じ、充填密度が50%程度と低いことが課題であった。 平成24年度は、常圧下、1000℃以下の熱処理による固相反応プロセスでの高密度MgB2合成法の基礎検討を行った。具体的には、2種の新しいプロセス、MgB4前駆体を用いることで空隙の原因となる仕込みMg量を従来の半分とした①MgB4 in-situ法、ex-situ法で課題であった弱い粒間結合をMgB2の自己焼結反応を利用して改善した②自己焼結ex-situ法を検討した。 ①MgB4 in-situ法については、MgB4前駆体粉末の合成方法の検討を行い、MgB4を主相として含む粉末を再現性よく作製可能なプロセスを見いだした。このMgB4前駆体を用いて0.5Mg+0.5MgB4→MgB2反応によるMgB2小型多結晶体の合成を試みたところ、900℃程度での熱処理によりMgB2が主相として得られた。充填密度を評価したところ、従来のin-situ法よりも緻密であり、本手法が高密度化に有効であることを確認した。 ②自己焼結ex-situ法については、原料MgB2粉末の性質が自己焼結反応に及ぼす影響を明らかにするため、種々のMgB2粉末を合成し、自己焼結反応後の微細組織の違いを評価した。原料MgB2粉末表面の不純物量を低減した試料において、焼結反応が活性化した組織がみられ、原料粉末、及び合成プロセスにおける酸素混入の制御が重要であることがわかった。高純度原料を用いた試料では超伝導相の緻密化と電気的結合性の向上が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に示すとおり、当初の計画以上に研究の進展が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた知見を元にスケールアップを行い、より実用レベルに近い約1 mの長さの高密度MgB2線材を試作する。線材試料の作製は、実用線材プロセスで用いられるパウダー・イン・チューブ法により、粉末の金属管への充填、溝ロール・平ロールによる冷間加工、熱処理によって行う。得られた線材の特性を多結晶試料と比較し、スケールアップによる特性向上の考察、多結晶試料で得られた高特性化の知見を線材試料で実際に生かせることを検証する。とくに、通電試験により、コイル、電線などの応用と同等の条件下での特性評価を行い、高密度MgB2線材のポテンシャルを実証することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料合成に必要な原材料、線材作製・加工に必要な金属容器等、及び消耗品類を購入する予定である。
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