研究課題/領域番号 |
24656370
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 功 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70183861)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 高イオン伝導結晶 / 酸化物固溶体 / 統計熱力学 / 分子動力学法 |
研究概要 |
本研究では,大規模計算によって,高イオン導電結晶を系統的に探索することを究極の目的として,必要な方法論の開発を行っている.平成24年度は,ホタル石構造を基本とする酸化物結晶を対象とし方法論の開発を行った.まず,Bi2O3系において,クラスター展開法の概念に基づいて,多数の高精度第一原理計算を多重実行し,酸化物イオン副格子における空孔配列を評価し,規則不規則転移温度を評価した.さらに,第一原理動力学計算を行い,有限温度における平均構造を求め,酸化物イオン伝導をシミュレーションした.その結果,予測された平均構造,酸化物イオン伝導度は,実験による報告と非常に近い値が得られた.また,同様の方法を逆ホタル石構造のLi2Oをベースとした複合酸化物Li6ZnO4やLi5AlO4などのリチウムイオン伝導に適用した.具体的には,92種類の複合酸化物について,第一原理分子動力学計算を行い,高温における拡散係数を評価した.また,クラスター展開法の概念に基づいて,多数の第一原理計算を多重実行し,複合酸化物の最安定原子配列を決定した.最安定原子配列をもとに,Li副格子における規則不規則転移温度を評価した.さらに,これらの網羅的計算の結果から,データマイニング手法を用いることにより,イオン伝導度の実験のない複合酸化物におけるイオン伝導度を予測した.その結果,従来の最大値の5倍のイオン伝導度を持つ複合酸化物が予測された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展している. 平成24年度において,当初の計画通り,溶質元素を添加しないBi2O3において,第一原理分子動力学計算,多数の高精度第一原理計算を行い,空孔配列,規則不規則転移温度,酸化物イオン伝導度を評価する方法論を開発することができた.さらに,平成25年度に実施予定であったLi2Oをベースとした複合酸化物での計算を進めることができた.さらに,本研究から着想を得て,当初予定していなかったイオン伝導度が未知の物質に対するイオン伝導度の予測を通して,データマイニングによる物性予測の方法論を開発することができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に引き続き,逆ホタル石構造を持つLi2Oをベースとした複合酸化物において,リチウムイオン伝導の計算を進める.局所環境として,酸化物イオン副格子における空孔配列だけではなく,陽イオン副格子の溶質原子構造と相関(会合状態)についても定量化する.酸化物イオン伝導体とリチウムイオン伝導体の類似点・相違点についての議論は存在しないが,共通の土俵で議論することで,固体イオニクス材料についての汎用的な情報が獲得できると期待できる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度において,備品は購入しない.計算機関連の消耗品,統計処理用ソフトウェアと,海外および国内での成果発表のための旅費,データ整理のための謝金から成る必要最小限の予算を計上した.
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