研究課題/領域番号 |
24656372
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木口 賢紀 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70311660)
|
研究分担者 |
佐藤 和久 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70314424)
|
キーワード | 電子顕微鏡 / 位相再構成 / 内部ポテンシャル / 強誘電体 / 薄膜 / CSD法 / PMN |
研究概要 |
本年度は、MOD原料を用いたCSD法でSrTiO3単結晶基板上へのPb(Mg1/3Nb2/3)O3薄膜のエピタキシャル成長条件と結晶性向上のための条件を検討し、高分解能電子顕微鏡法により結晶構造と組織を詳細に調べるとともに、収差補正TEM/STEMによる原子分解能観察を行った。さらに、原子分解能像の位相再構成によって試料直下における波面を推定し、波動関数の位相分布算出を試みた。Pb(Mg1/3Nb2/3)O3薄膜について、Pb10at%過剰の仕込み組成で酸素雰囲気中650℃で結晶化した薄膜は、XRDによりPMN単相でかつ113ピークのロッキングカーブ半値幅が0.1°オーダーの高い結晶性を示した。パイロクロア相の生成を抑制し、かつ優れた結晶性を達成したペロブスカイト相単相のエピタキシャル薄膜の成長を実現できたことを示唆している。また、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3とPbTiO3の固溶体(PMN-PT)についてもエピタキシャル成長を実現し、これらの薄膜の収差補正TEM及び収差補正HAADF/ABF-STEM像観察により、酸素原子を含めた原子カラムの結像に成功した。特に、収差補正TEM原子分解能像の位相再構成によって試料直下における波動場を推定し、波動関数の位相分布の再生を試みた。現段階では結晶試料薄片の厚みに依存した動力学的回折が無視できないため、さらに結晶試料薄片の厚さに対する波動関数の位相分布の変化を実験及び像シミュレーションの両面からに解析する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度では、CSD法によりPb(Mg1/3Nb2/3)O3エピタキシャル薄膜の結晶性向上及びPbTiO3との固溶体薄膜のエピタキシャル成長を確立すると共に、収差補正電子顕微鏡観察によるナノ組織の解明と原子分解能画像の位相再構成により試料直下における波動場の推定の段階まで到達した。従って、内部ポテンシャル解析やリーク特性評価に耐えうる試料が得られたと考えられ、この点については概ね順調に進展している。ただし、共用設備の改修によりBiFeO3薄膜における位相再構成およびリーク特性評価に関する実験に遅れが生じたこと、さらに動力学的効果の検証の2点については次年度研究を進める必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、得られたPMN-PT薄膜を使用して、結晶試料薄片の厚さに対する波動関数の位相分布の変化を実験的に解析すると共に、BiFeO3薄膜についても高分解能電子顕微鏡画像の位相再構築による内部ポテンシャル評価を中心に研究を進めるとともに、マクロな電気特性との対応を明らかにする予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行に必要な共用の研究設備(電子顕微鏡)が、2013年1月より3月末までの期間、急遽施設の大幅改修が実施され、関連する実験の遂行が滞ったことから、これまでに得られた研究成果の検討に必要な追加実験を次年度に延長し、成果をまとめる必要が生じたため。 追加実験用の試料作製等に必要な消耗品や、今年度までに得られた成果と併せて取りまとめ、総合的に成果の検討を行い、学術雑誌への論文投稿や学会発表を通した成果の公表に使用する予定である。
|