研究課題/領域番号 |
24656374
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
雨澤 浩史 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90263136)
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研究分担者 |
八代 圭司 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (20323107)
橋本 真一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60598473)
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キーワード | 軟X線吸収分光 / その場測定 / 機能性酸化物 / 電子構造 |
研究概要 |
燃料電池を始めとする高温電気化学デバイス等、機能性酸化物により構成されるデバイスの高性能化を図る上で、材料物性に深く関与する電子構造を把握することは重要である。本研究では、高温・制御雰囲気・通電状態下での電子構造評価を可能とするその場軟X線吸収分光測定技術を開発することを目的とした。 本研究では、高温電気化学デバイスにおいて多用される3d遷移金属酸化物の直接分析を念頭に、軟X線領域(< 1 keV)を対象とした。JASRI・為則によって開発された大気圧環境下軟X線分光用差動排気システムを採用し、これに本研究で新たに開発した特殊環境測定用試料ホルダを搭載することにより、高温・制御雰囲気・通電状態下でのその場測定を可能とした。 LaCoO3をモデル酸化物に、高温、各種酸素分圧下での測定を試みた結果、温度873K、酸素分圧0.01bar以下の条件であれば、3d遷移金属L吸収端、酸素K吸収端での軟X線吸収分光測定が可能であることが確認された。また、LaCoO3に含まれるCoイオンのスピンが、温度上昇に伴い、中間スピンから、中間スピンと高スピンの混合状態へ徐々に推移することが分かった。さらに、La2NiO4酸化物薄膜をモデル空気極酸化物に、高温、各種酸素分圧、通電下での測定を行った。その結果、一定の酸素分圧雰囲気においても、通電を行うことで電極酸化物が還元されること、酸化物の還元には遷移金属イオンと酸素イオンの両者が関与していること、が明らかとなった。以上のような、酸化物の電子構造変化は、本研究で開発された手法を用いることにより、初めて実験的な評価が可能となった。 以上、本研究により、高温、各種酸素分圧、通電下での軟X線その場吸収分光測定技術を世界に先駆けて確立した。本手法は、機能性酸化物材料の高温における電子構造の理解を深める汎用的かつ革新的分析手法となると期待される。
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