研究課題/領域番号 |
24656378
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
舟窪 浩 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (90219080)
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研究分担者 |
木口 賢紀 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70311660)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 誘電体物性 / 強誘電体 / エピタキシャル膜 / 分極状態 |
研究概要 |
ペロブスカイト構造(ABO3)を有する正方晶強誘電体のうち、歪み量が7%を超える物質では大きな歪みのため5面体のピラミット構造となるが、電圧印加によって実験的に分極反転が確認されたのは、約7%のPbTiO3に限定されていた。 申請者は、正方晶のBi(Zn1/2Ti1/2)O3-BiFeO3の薄膜作製を行い、22%の大きな歪みを有する分極軸単一配向単結晶膜の作製に世界で初めて成功した。また、電圧印加によって分極反転が起きることを、世界で初めて見出している。さらにZnサイトをMgで置換すると、約20%と約7%の歪みを有する結晶相が共存し、これら2つの歪み状態の安定性が近い可能性を見出した。 本研究は上記成果を基に、22%の大きな歪みを有する正方晶のビスマス強誘電体の分極軸単一配向単結晶膜を作製し、電圧の印加によって一つの物質で4値の分極状態の可能性を明らかにすることを目的としている。 本年度は、絶縁性の劣化を招くBiFeO3を排除して大きな歪の膜の作製を試み、 Bi(Zn1/2Ti1/2)O2-Bi(Mg1/2Ti1/2)O3膜を作製した。その結果、粉末での組成範囲に比べてより広い組成範囲で、大きな歪みを有する膜の作製に成功した。現在得られた膜について、強誘電性の測定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大の懸案であった、高い耐圧が期待できる組成で大きな歪を有する強誘電体が得られた。次年度にこの成果をもとに研究を加速させたい。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、作製のみならず、4値の観察にも力を入れて研究を行う予定である。膜の組成を検討することで4つの分極状態の安定化を試みると共に、室温下において電圧印加のみにより4つの分極状態の出現の可能性を探る予定である。 I) 薄膜作製: 初年度の結果を受けて更なる高品質化を行う。また、新たな元素での置換や新規組成も検討する II) 特性評価: 初年度での評価を踏まえて更なる測定を行うとともに、印加するパルスの幅を変化させて分極状態変化の時間依存性の測定を様々な温度で行う。また、電圧印加時のin-situ測定も合わせて行うことで、分極反転の時間依存性(反転ダイナミックス)の測定も試みる。具体的には下記の方法を検討する。 A) SPring-8での電界印加とX線回折を同期させた電界下のX線回折 B) 電圧印加下の圧電応答顕微鏡像 C) 電圧印加下のラマン分光分析 D) 電圧印加下でのTEM観察
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、解析方法の確立に時間がかかったため、試料作成に使用できる時間が相対的に少なく、当初予定していた物品費をすべて使用しなかった。 本年度は、解析方法が確立する目処が立ったため、製膜と評価を積極的に行っていく予定である。 予算は、膜の作製および評価のための消耗品を購入する予定である。 また、得られた成果の発表のために旅費を使用する予定である。 さらにTEM観察等の外部依頼分析のために予算を使用する予定である。
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