ガラスは耐候性が良好で、賦形性に優れ、透明で散乱が極めて少なく、それらの特徴からファイバレーザなどへ展開されているが、活性イオンのサイト及び価数状態は完全に制御することが出来ていないため、特に遷移金属添加ガラスのレーザの発光効率は著しく乏しいのが現状である。非水系のリチウムイオン電池ではリチウムイオンの脱挿入に伴って遷移金属イオンの価数状態が変化する。場合によっては異常原子価状態が安定に存在することもある。本研究ではアルカリイオン伝導性ガラスへ遷移金属イオンを添加し、材料探索と異常原子価状態の誘起の可能性について検討した。 研究の過程で良好なナトリウムイオン伝導性を示し、ナトリウムイオン電池の活物質として機能するリン酸鉄ナトリウム結晶化ガラスを見出した。この結晶はa軸方位に伝導チャネルを有しており、3V、91mAh/gの放電容量を示す。この結晶化ガラスを基本組成とし、各種遷移金属イオンを置換してその電気化学的特性を調査した。マンガンを置換したガラスにおいてはマンガンを添加することで4.1V近傍にMn2+からMn3+への平衡電位を確認した。但しガラス中の鉄を全置換すると放電容量は急激に低下し、電界を印加した直後に分極が起こった。またチタンを置換したガラス系ではガラス中のTi4+からTi3+への還元を確認した。この他にスズリン酸系ガラスにナトリウムを挿入することでスズイオンの還元が起こり、ナノメートルオーダーの金属微粒子を誘起することに成功した。3価のチタンや金属微粒子の分布を制御することでレーザーホスト材等の光学材料へ応用できると期待される。
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