平成25年度は、主にBiFeO3系強誘電体薄膜の光により誘起される各物性発現の鍵を握る因子について調べた。BiFeO3系薄膜の可視光照射下での光誘起特性には、バンドギャップの値の他に作製後の薄膜中に自然発生する自己バイアス電界が大きく関係していること、かつその大きさと方向について薄膜の暗条件・可視光照射条件下での電流-電圧特性をもとに明らかにした。また、ここでの自己バイアス電界は、薄膜中の欠陥濃度(特に酸素空孔濃度)の不均一性(分布)が発生原因であることがわかった。さらに、作製した薄膜の光誘起特性に関する結晶成長方位依存性についても明らかにした。光誘起特性の向上のための方策としては、貴金属のナノ粒子(特に光学的な特性から銀ナノ粒子)の複合化により、その表面プラズモン効果を利用した光電流の増強に対する顕著な効果を見いだした。一方、BiFeO3系薄膜の分極状態の解析と光誘起特性との関係については、走査型プローブ顕微鏡を応用して外部バイアス電界を変化させたときの表面電流検出像と表面電位像の撮像に成功し、その変化の挙動を可視化することができた。また、作製した薄膜のデバイス応用に向けた可能性探索については、これまでにBiFeO3系強誘電体薄膜が発生する光電流・光起電力は分極方位により反転可能なこと、長時間(数時間)にわたって安定なこと、薄膜の微細加工は通常の半導体プロセスが適応可能なことを明らかにした。エネルギー素子などBiFeO3系薄膜のデバイス化を考えた場合、光照射に対する応答速度については十分なものの、エネルギー密度的には未だ不十分なため、本研究で見いだされた強誘電特性の改善、貴金属ナノ粒子の複合化および薄膜中の欠陥濃度分布制御などの他に、結晶成長の方位を制御した薄膜の強誘電ドメイン構造制御、透明導電性化合物との複合化など新規な複合構造形成が今後の課題となることがわかった。
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