研究課題/領域番号 |
24656386
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
早川 聡 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (20263618)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 酸化チタン / アパタイト / 擬似体液 / 動的環境 |
研究概要 |
擬似体液フローリアクターシステム(SBF-FRS)を用いて隙間空間におけるアパタイト粒子析出挙動を調べた。鏡面チタン試片を400℃に保持したマッフル炉で1時間熱処理を行い,その後自然放冷して得られた試片を酸化チタン試片(HT)とした。さらに,小久保の方法に従って擬似体液(SBF)を作製した。SBF-FRSを用いて,所定の流速及び浸漬時間SBFに浸漬した試片の表面構造を薄膜X線回折法で調べ,表面形態を走査電子顕微鏡で観察し,SEM写真から画像解析ソフトを用いて調べた。静的環境 (S)の条件としてSBF-FRS内に500 μLのSBF (pH7.4, 36.5℃)を1日間および2日間保持した。得られた試片をそれぞれS1dおよびS2dと表記した。動的環境 (F)の条件としてリザーバーに溜めたSBF (pH7.4, 36.5℃)をペリスタティックポンプを用いて0.01 ml/minの流速で2日間保持した。得られた試片をF2dと表記した。静的環境に2日間保持した後に,続けて動的環境に1日間保持した。得られた試片をS2dF1dと表記した。S2dおよびS2dF1dには試片表面上に白色の析出物が観察されたが,F2dの試片表面上には析出物は観察されなかった。S2dの試片表面上には半球状の粒子(0.5-2.5 μm)が少量分散して析出しているのが観察されたのに対して,S2dF1dの試片表面上には全面にアパタイト粒子(10 μm程度)が析出し,粒子同士が融合している様子が観察された。一方,動的環境によって隙間空間のSBFの淀みが打ち消されたSBF動的環境ではアパタイト粒子が析出しなかった。したがって,静的環境に保持した期間内に熱酸化チタン層の表面に所定量のアパタイト粒子が一端析出すれば,その後に続く動的環境下で新規のアパタイトの核形成が誘導され,さらに粒子の成長も促進されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は動的環境下でもアパタイト核形成を誘導できることを期待していたが, SBFの淀みが打ち消される動的環境では流速に関係なくアパタイト粒子の析出が確認されなかった。したがって,動的環境におけるアパタイト形成機構をより詳細に調べるために動的環境の流速およびSBF中での保持時間(アパタイト核誘導期間)がアパタイト粒子の析出挙動に及ぼす影響をより詳細に調べる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
動的環境におけるアパタイト形成機構を詳細に調べるためにSBF-FRS内にSBF (pH7.4, 36.5℃)を2日間および3日間の静的環境で保持した後に,SBFリザーバーから0~0.30 ml/minの動的環境で,所定の期間保持し,SBF動的環境におけるSBFの流速および保持期間が熱酸化チタン表面上へのアパタイト粒子析出挙動へ及ぼす影響を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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