研究概要 |
小久保の方法に従って作製した擬似体液(SBF,pH7.4, 36.5℃)のフローリアクターシステム(SBF-FRS)を用いて,ルチル型酸化チタン層を形成させたチタン基板(HT試片)2枚を対面配置させた隙間空間について,アパタイト粒子の析出挙動に及ぼす影響を調べた。SBF-FRS内に500μLのSBFを2日間および3日間の静的環境で保持し,得られた試片をS2dおよびS3dと表記した。SBF-FRS内に500μLのSBFを2日間の静的環境で保持した後に,SBFリザーバーから0~0.30 mL/minの流束で,所定の期間 (nh, n=3, 6および12)保持した。SBFへ浸漬後に得られた試片をS2dF(流速)nhと表記した。 S2dF(0.01)12h, S2dF(0.05)12hおよびS2dF(0.10)12hにアパタイト粒子が確認された。S2dの後に続けて動的環境に保持した試片では保持時間および流速に比例してアパタイト形成量が増加した。0.5-2.0μmの粒子径のアパタイト粒子が観察された。S2dおよびS3dでは粒子数および被覆率に差はなかった。S2dF6hの全ての試片はS2dおよびS3dよりも粒子数および被覆率が増加した。S2dF(0.10)6hは,S2dF(0.01)6hおよびS2dF(0.05)6hよりも被覆率が増加した。以上の結果をまとめると,(1)SBF動的環境ではあらかじめ析出したアパタイト粒子層からアパタイト結晶の微粒子または核がSBFの流れによって飛散する。(2)アパタイト結晶の微粒子または核は動的環境の流れ方向に沿ってHT試片表面のアパタイト核形成サイトに沈着して,そこで成長する。(3) SBFの流速に比例して,飛散するアパタイトの微粒子および核が増加し,沈着する頻度も増加し,アパタイト粒子数および被覆率が増加したと考えられる。
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