研究課題/領域番号 |
24656387
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
楠瀬 尚史 香川大学, 工学部, 准教授 (60314423)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エレクトロスピニング / ポリビニルブチラール / 炭化珪素 / アルミナ / イットリア / ポリビニルアルコール |
研究概要 |
エレクトロスピニング(ES)法を用いてセラミックスナノファイバーを作製する場合、まずセラミックスと有機バインダーからなる有機無機ハイブリッドファイバーの作製が必要である。得られた有機無機ハイブリッドファイバーを熱処理することにより、有機バインダーを熱分解し、セラミックス成分のみのナノファイバーを得ることが可能になるが、バインダーの種類によって得られるセラミックスナノファイバーの形状の維持に影響が出てくる。 24年度は新たに購入したES装置を用い、セラミックスバインダーとして使用可能なポリビニルアルコール(PVA)重合度500および2000、ポリビニルブチラール(PVB)重合度630および2400、ポリエチレングリコール(PEG)を用い、希釈溶媒として水およびアルコールを選択し、有機バインダーの重合度、濃度および溶媒がバインダーの紡糸に与える影響について検討した。結果として、PEG、重合度の低いPVA重合度500およびPVB重合度630では、溶質濃度5、10wt%いずれの場合でも、ファイバーの紡糸はできなかったが、重合度の高いPVA重合度2000およびPVB重合度2400を用いることによって溶質濃度5~10wt%で紡糸できることが分かった。PVB重合度2400を6wt%となるようにアルコールに溶解し、これにセラミックス成分がセラミックス/PVB=25wt%/75wt%および40wt%/60wt%となるように加え紡糸用スラリーを調整した。セラミックス成分としてはSiCに助剤成分としてY2O3とAl2O3がモル比で1:7組成のものを10vol%となるように混合したものを使用した。両方のスラリーにおいてセラミックス/PVBハイブリッドファイバーの紡糸が可能であり、セラミックス成分40wt%のものを1750℃で熱処理することにより、強度は弱いがセラミックス不織布を作製することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実験の実験計画としては、バインダー種類・濃度、セラミックス濃度を変化させてエレクトロスピニング法によりAl2O3ファイバー不織布を作製し、その知見をもとにSiCセラミックス不織布を作製することである。当初の計画では、PVAなどのエレクトロスピニング法で通常使われている熱可塑性樹脂バインダーでセラミックスが紡糸できない場合、また熱処理によってファイバー構造が維持できない場合はエポキシやフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂も紡糸用バインダーとして考えていたが、PVBで紡糸可能であり、さらに熱処理後もファイバー構造が維持されていたことから、熱硬化性樹脂の使用は行わなかった。また、SiCの紡糸がうまくいかない場合は、Al2O3をモデルとして知見を得る予定であったが、PVB-エタノール溶液を調整することにより、SiC高濃度40wt%でも紡糸でき、さらに熱処理後もファイバー構造が維持できたため、Al2O3をモデル材とする実験は行わなかった。実験内容の変更はあったものの、予定通り平成24年度の目標であるSiCファイバーからなる不織布の作製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、作製されたSiCファイバーは形状がスムーズでなく、SiC粒子個々の繋がりによりファイバーが形成されているため表面は凹凸の多い状態なっている。バインダー組成の検討や、より細かいSiC原料粒径を検討する必要がある。また、熱処理温度を低下させることや助剤組成と量を最適化することもファイバー形状をスムーズにすることにつながると考えられる。スムーズなSiCファイバーからなる不織布の作製条件について再検討すると共に、マイクロチューブ不織布の作製についても実験を行う。マイクロチューブの作製方法としては同心二重円の針を新たに設計・作製し、外側にはこれまで得られた知見をもとにセラミックス成分の入ったバインダースラリーを、内側にはそれとは混じり合わないバインダーを充填し紡糸を行う。セラミックス側のバインダーにPVBを用いた場合は内側には混じり合わないのでPVAが充填可能である。シリンジ径が大きくなるので、紡糸条件を再検討し、熱処理を行ってマイクロチューブの作製を行う。得られたマイクロチューブの微細組織観察から、バインダー種・濃度、セラミックス粒径・濃度、バインダー組成、熱処理条件など最適なマイクロチューブ不織布の作製条件を求める。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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