エレクトロスピニング(ES)法を用いてセラミックスナノファイバーを作製する場合、まずセラミックスと有機バインダーからなる有機無機ハイブリッドファイバーの作製が必要である。得られた有機無機ハイブリッドファイバーを熱処理することにより、有機バインダーを熱分解し、セラミックス成分のみのナノファイバーを得ることが可能になるが、バインダーの種類によって得られるセラミックスナノファイバーの形状の維持に影響が出てくる。セラミックスバインダーとして使用可能なポリビニルアルコール(PVA)重合度500および2000、ポリビニルブチラール(PVB)重合度630および2400、ポリエチレングリコール(PEG)を用い、希釈溶媒として水およびアルコールを選択し、有機バインダーの重合度、濃度および溶媒がバインダーの紡糸に与える影響について検討した。結果として、PEG、重合度の低いPVA500では、いずれの濃度でも、ファイバーの紡糸はできなかったが、重合度の高いPVA 2000(濃度12%)およびPVB重合度630(濃度6~12%)、2400(濃度4~10%)を用いることによって紡糸できることが分かった。バインダーのみで紡糸できたPVA2000、PVB630、2400の濃度2~12%のバインダー溶液に、セラミックス/バインダー=40vol%/60vol%となるように、SiC粉末とAl2O3-Y2O3助剤を加えたスラリーを紡糸したところ、PVAではどの濃度でも紡糸できなかったが、PVB630では6~10%、PVB2400では2~6%の濃度でセラミックスとバインダーからなるハイブリッドファイバーを紡糸できた。得られたハイブリッドファイバーを1750℃で熱処理したところ、PVB630では10%、PVB2400では6%の濃度のものだけが、熱処理後もファイバー形状が維持され、SiCセラミックスのみの不織布を作製することができた。この同組成のスラリーは、ES装置の二重ノズルをつかって、セラミックスマイクロチューブの作製も検討された。
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