研究課題/領域番号 |
24656391
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
忠永 清治 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90244657)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 水酸化物イオン伝導体 / 電気化学的酸素分離 / 層状複水酸化物 |
研究概要 |
これまでに、酸化物イオン伝導体を用いた膜分離法による酸素製造が広く研究されているが、低温作動化が新たな課題となっている。一方、層状複水酸化物(LDH) は組成の多様性や陰イオン交換能を有することから、幅広い分野で応用されている。我々はこれまでにLDHの電気化学的特性に着目し、層間に炭酸イオンを含むLDHが室温・加湿下で高い水酸化物イオン伝導性を示すことを見出している。本研究では、水酸化物イオン伝導体であるLDHを用いた新規な酸素分離膜を実現するための第一段階として、LDHを電解質として用いた電気化学的な酸素分離を試みた。 本年度は、層間に炭酸イオンを含むNi-Fe 系LDHを電解質として用いた。電解質としてLDH粉末をプレス成型したペレットを用い、その両側に電極触媒Pt/Cを含む触媒層を形成した。片側に加湿空気、反対側に加湿したアルゴンを供給し、一定時間の電流を流した後のアルゴン側の透過気体をガスクロマトグラフィーによって分析することで行った。 Ni-Fe系LDHは相対湿度80%で10-3 S cm-1オーダーの水酸化物イオン伝導性を示した。50℃、相対湿度70%において電流密度を変化させた場合、酸素透過量が電流密度に依存して増大することが確認された。したがって、水酸化物イオン伝導性無機固体であるLDHを電解質として用いた電気化学的酸素分離が可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外部から電流を供給することによって、水酸化物イオン伝導性無機材料を用いた酸素分離が可能であることを今回初めて明らかにした。研究の最終的な目的は、外部からの電流を供給することなく酸素分離を達成することであるが、外部電流の供給による酸素分離にまず成功したことによって、その実現に一歩近づいたと言える。この条件で、電極層の構築に関する様々な検討を進めることが可能となる。したがって、おおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
外部から電流を供給することによって、水酸化物イオン伝導性無機材料を用いた電気化学的な酸素分離が可能であることを今回初めて明らかにしたが、現状では、測定系のリークが大きいことなど、得られる酸素の純度が十分に高いとは言えない。したがってまず、系内のリークを抑えるために、測定系の再検討や、電解質ペレットの緻密化などの検討を進める。 一方、外部電流を供給することなく酸素分離を達成するためには、膜内の電子電伝導性の向上が必須である。LDHの組成を制御することによって電子伝導性の向上を目指すだけでなく、金属やカーボン粉末などの電子伝導性の高い材料との複合体を作製することにより、水酸化物イオン伝導性と電子伝導性の両方を兼ね備えた膜を構築し、最終目標である外部電流を供給しない酸素分離の達成を目指す。 また、触媒として、Pt以外の触媒を探索することについても検討を進め、酸素還元・酸素発生がより効果的に起こる電極の構築についてさらに検討を進める。 研究代表者の所属機関が平成25年度から変更となるが、本課題では新所属の研究室および前所属の研究室の両方において実験を進める予定であり、連絡を緊密に取りながら本課題の推進に取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を始めた当初は、様々な系のLDHを合成し、その電子伝導性を評価することを中心に進め、期間の後半になってようやく酸素分離に関する検討を始めたために、アルゴンガスやPt触媒などを予定していたよりも使用しなかったこと、また、研究を進める中で、酸素分離後の酸素濃度の測定方法として、酸素濃度計ではなく、ガスクロマトグラフを使用することに変更したこと、の2点の理由により次年度に使用する研究費が生じた。 ガスクロマトグラフを用いた酸素濃度の評価の基本的な評価系の構築ができたので、次年度は、材料開発と並行して酸素分離の評価を積極的に進めることを予定している。材料開発を行うための高純度試薬や実験器具類、触媒層の構築のための電気化学的な評価に用いる貴金属類などの消耗品費を中心に研究費を使用する予定である。
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