研究課題/領域番号 |
24656393
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
南 秀人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20283872)
|
研究分担者 |
鈴木 登代子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (40314504)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 自立型感温性ゲル粒子 / イオン液体 / 体積相転移現象 / 複合ゲル粒子 |
研究概要 |
24年度は,イミダゾリウム系イオン液体系における低温膨潤-高温収縮のLCST型体積相転移現象を示すポリマーに焦点を当て,感温性ゲル粒子のベースポリマーの探索,イオン液体含有ゲル粒子の作製について検討を行った。 メタクリル酸エステル系モノマーの単独重合体及びその共重合体を中心に,各種イミダゾリウム系イオン液体の組み合わせを検討した結果,適切な疎水性度および温度応答性の観点から,ベースポリマーにはポリフェニルエチルメタクリレートベースの共重合体(PPhEMA)を,イオン液体には1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド([Bmim][TFSA],以下IL)を選択した。 それらを用いて,懸濁重合によるゲル粒子の作製を行い,得られた粒子の分散状態及び乾燥状態での温度応答性挙動を温度制御下,光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いて観察した。得られたPPhEMAゲル粒子は水媒体中において,昇温すると60˚C付近においてポリマーとILが相分離し始め,80˚Cにて完全に分離した。続いて,降温すると再びILにて速やかに膨潤した。さらに,相分離するLCSTは水媒体中(60˚C)の方がIL中(98˚C)よりも大幅に低下した。この現象はゲル粒子内への水の侵入が原因の一つと考えられた。 乾燥状態においてポリマーと相分離したイオン液体が粒子から離れ出てしまわないように,リザーバーの役割をするポリマーと複合化するために,作成したゲル粒子を用いて他成分(メタクリル酸メチル,PMMA)をシード重合したところ,異なる体積相転移挙動を示す2種類のポリマーから成るゲル粒子が作製された。得られた複合ゲル粒子は,分散状態及び乾燥状態のどちらの場合においても,粒子外にイオン液体が漏れ出すことなく,温度に応答して形状変化を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
得られた複合ゲル粒子はPPhEMA相とPMMA相に明瞭に相分離しており,室温から加熱すると,LCST以上でPPhEMA相は収縮し,PMMA相がさらに膨潤する様子が観察された。また,乾燥状態においてもILの漏れだしもなく,温度に応答し繰り返し形状変化を示したことから,作製した複合ゲル粒子はILが粒子内を移動することで形状変化を示すことが認められた。しかしながら,その形状変化の程度は期待より小さかった。より大きく形状変化を示す複合ゲル粒子の作製には,重合時にMMAで膨潤したシード粒子がポリマー相とIL+MMA相として雪だるま状に相分離し,IL側で優先的にMMAのシード重合が進行することが望まれる。25年度はその改善を行う。 ①熱力学的アプローチ:ポリマー相をより凸に相分離させるために,VTに代わり,親水性の高いMAAを用いてP(PhEMA-MAA)ゲル粒子を作製する ②速度論的アプローチ:光重合の導入:MMA膨潤シード粒子はLCST以上で一旦ポリマー相とIL+MMA相に完全に相分離するものの,10分以内にIL中のMMAがポリマー相に再分配した。そのため,光重合を用いて,MMAが再分配される前に,重合を完結させることを試みる。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目は,初年度に選択されたベースポリマーとイオン液体からなる体積相転移ゲルもしくはカプセル粒子を用いて,リザーバーポリマーとの複合化を行い,フリースタンディングゲル粒子の作製とその温度応答性挙動の検討を行ない,その応用に関しても次のように試みる。 ○雪だるま型フリースタンディングゲル粒子の作製とその温度応答性挙動:刺激応答性ゲル粒子をシードとして,リザーバーポリマーのシード重合を行う。初年度に明らかとなった問題点の改善を行ない,両ポリマーとイオン液体の相溶性を調整し,両粒子があたかも雪だるまのように点接着するような状態での複合化を目標にする。 ○階層構造化による刺激応答性材料の検討:上記で得られた粒子を媒体除去により集積させることにより,マクロな高分子/イオン液体複合ゲル材料を作製・検討する。この様なゲルは真空状態および高温においても機能するアクチュエータへの応用が期待される。 ○Pickeringエマルション型フリースタンディングゲル粒子:体積相転移ゲル粒子自体を粒子型乳化剤として膨潤溶媒(例えばイオン液体)を安定化させたPickeringエマルションについて検討する。この方法は,単分散な体積相転移ゲル粒子を予め作製しておけば膨潤溶媒滴のサイズをコントロールするだけで容易にゲル粒子/イオン液体比を制御することができる。また,Pickeringエマルションを作製時に脱膨潤状態で作製してその後膨潤させることにより,ゲル粒子同士が融着することにより強固なシェル層が容易に調整できることが期待される。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に,ゲル粒子の作製に必要な重合用ガラス器具類,モノマー及びイオン液体などの試薬に使用する。また,成果発表旅費(国内及び国外)および論文投稿のための英語校閲費などの使途を予定している。研究の進捗状況によっては,週数時間程度の研究補助員の雇用及び,大型分析装置の使用料などへの拠出がある。
|