研究課題/領域番号 |
24656394
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高木 均 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20171423)
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研究分担者 |
ナカガイト アントニオ・ノリオ 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (50523156)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | セルロースナノ繊維 |
研究概要 |
廃棄セルロース源として古新聞を使用してセルロースナノファイバーの抽出実験を行った.使用した抽出処理方法は,化学薬品を用いたケミカル処理と超音波照射を用いた物理的処理から成る. 以下に示す各処理を行った後,走査型電子顕微鏡により繊維表面の形態観察を行った.まず,原料をメカニカルミキサーで粉砕した後,水酸化ナトリウムを使用してパルプ中のヘミセルロースの除去を行った.その後,亜塩素酸を用いたブリーチング処理によりリグニンの除去と脱墨(漂白)処理を同時に行う.この処理により灰色のパルプは白色に変化した.最後の化学処理として硫酸を用いてセルロースナノファイバー中のアモルファス(非晶質)部分の除去を行った.この段階ではパルプ表面近傍のみの部分的なナノ繊維化が行われている状況であった.その後の超音波分散機によるソニケーション処理により,最終的に直径10-40nmのセルロースナノファイバーになっていることを確認した.このようにセルロースナノファイバーの抽出には成功したが,化学処理を行う際,ならびにその後の水洗処理を行う際に,一部の原料がスクリーンの目から流出するため,歩留まりが悪くなることが分かった.次年度は適切な濾過処理を導入してこの歩留まりの向上にも取り組む予定である. 上述の処理方法により抽出したセルロースナノファイバーを用いた生分解性複合材料の試作とその力学的特性評価を行った.用いた生分解性樹脂は水溶解性を有するポリビニルアルコールである.その結果,セルロースナノファイバーを10wt%添加した複合材料を試作した.引張試験の結果,この試作複合材料は無添加の樹脂単体材よりも高強度,高弾性を示しており,抽出したセルロースナノファイバーを複合材料の強化繊維として利用可能であることを明らかにした.次年度は繊維添加量を変化させて複合材料の試作を行い,さらなる特性改善に取り組む予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的どおり,原料の開繊,漂白処理,アルカリ処理,硫酸処理処理を行い,各段階での組織を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察しその構造変化について調査した.そしてさらに超音波照射による効果についてもSEMで観察し,セルロースナノ繊維になっていることを確認した.そしてさらに,開繊したセルロースナノ繊維と生分解性樹脂であるポリビニルアルコールとを組み合わせた複合材料の試作を行い,抽出したセルロースナノ繊維による強化が発現することを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
抽出したセルロースナノ繊維の形態,特に長さに関する情報を収集するために,化学処理の条件を変えてセルロースナノ繊維の抽出を行い,そしてこれを用いたポリビニルアルコール/セルロースナノ繊維複合材料を試作し,この強度と弾性率に及ぼす繊維形態の影響について調査する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の4月にイタリアで開催される国際会議に参加することが決定したので,その時点での残金を次年度に繰り越して旅費の一部に充てることにした.
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