研究概要 |
マグネシウム(Mg)は地球上に豊富に存在する。最近、地球環境・エネルギー問題の解決のため、この豊富なMg資源量に着目したMg-空気電池に期待が集まっている。 本研究では、Mg-空気電池に使用する新しい負極材料としてMg基非晶質合金を検討した。Mg-Ca-Al合金やMg-Ni-Pd合金の急冷凝固薄帯を作製し、それらを負極材として用いて空気電池セルを作製してその発電量を調べた。まずMg85Ca10Al5急冷薄帯試料はX線回折法によりハローパターンのみが観察され、非晶質状態であることが確認された。また走査示差熱分析の結果、Mg85Ca10Al5非晶質合金の結晶化温度はTx=144.9℃であった。 放電量の測定では、Mg板の場合は319.2mWh/gであった。これに対してMg85Ca10Al5非晶質合金の放電容量は325.5mWh/gであり、Mg板の場合よりもわずかに放電量が上回った。Mg85Ca10Al5非晶質合金はMg含有量が85at%であるが、純Mg板(Mg100at%)よりも高い放電量を示すことが分かった。この値は一般的なリチウムイオン電池の放電容量約200mWh/gを大幅に超え、Mg電池の可能性を示すことが出来た。Mg90Ni5Pd5急冷薄帯試料の発電容量は、74.3mWh/gと極めて少なかった。目視では電解液中で著しく溶解していることが見られたので、恐らく、大部分が電解液中に放電されるなどのロスが生じたようであった。 また、Mg90Ni5Pd5合金では、発電後の電解液は黒色となった。これは非常に細かい微粒子が生成されたからと思われる。X線分析を行ったところ、この黒色沈殿物はMg(OH)2と(Ni, Pd)の粒子から成ることが分かった。Mg90Ni5Pd5合金の溶解は、脱合金化によるNi、Pd金属微粒子の作製法としても有効であることが示唆された。
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