本年度は前年度に引き続き、ワイヤレス疲労損傷スマートパッチのうち、き裂進展計測システムの設計を行った。この計測部は本システムにおいて重要な技術である。このスマートパッチの目的は繰返し回数、応力振幅、最大応力を推定すること、そしてそれら推定した値と対象物の応力振幅と破断繰返し回数の関係から対象物の疲労損傷度を見積もることである。メリットとして配線が必要ないこと、定期検査のときに短時間でパッチを回収できること、そして単体で疲労損傷度を見積もるのに必要な繰返し回数、応力振幅が得られ、さらに最大応力を推定することができることが挙げられる。そこで、損傷記憶の理論的考察を行い、センサ出力から損傷度を評価する手法について検討した。 次に、き裂進展計測システムの開発を行った。疲労損傷記憶センサ形状の最適設計のために、センサの寸法、導入き裂長さについて、有限要素法コードを利用して設計を行った。また、またき裂進展長さが測定しやすい、最適な合金系および寸法の選択を行った。さらにこれを工学的に実現するための成膜プロセスについて検討することにより、高感度のセンサの開発が実現できた。 さらに、腐食センサであるACMセンサのワイヤレス化に取り組んだ。ZigBeをもとにした疲労センサおよび腐食センサの出力が同時計測可能なインターネットシステムが構築できた。これらのシステムを用いて、奄美大島および宮古島における橋梁の劣化モニタリングが実現できた。
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