研究課題/領域番号 |
24656404
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
扇澤 敏明 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (80262294)
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研究分担者 |
小畠 英理 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (00225484)
松本 英俊 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40345393)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 人工血管 / ePTFE / イオンビーム / コラーゲン |
研究概要 |
本研究は、直径3mm以下の小口径人工血管を実現することを目指し、表面処理を施した高分子基材上の表面構造・表面物性と細胞接着性・血小板吸着性との関係を調査することを目的としている。当該年度においては、人工血管内壁のモデルとしてシート状の延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)基材を用いて、イオンビームなどにより表面処理を行い、コラーゲンの付着挙動と表面の分析に関する研究を行った。ePTFE、Neイオンビーム照射ePTFE、さらにそれにコラーゲン塗布したもの、さらに、Heイオビーム照射したものについて、その表面構造について、走査型電子顕微鏡(SEM)および原子間力顕微鏡(AFM)観察により観察した。また、表面の化学構造については、X線光電子分光(XPS)、顕微フーリエ変換赤外分光(FTIR)測定を行い、表面に存在する原子、官能基、イオンビーム照射によるカーボン生成の有無を調べた。結果として以下のことが明らかにされた。まず、ほとんどの物質と接着しないPTFEにコラーゲンが接着する原因については、Neイオンビームの照射によりePTFE表面近傍のフィブリルを切断し、コラーゲンが膜内部に入りやすくしていることとePTFE表面に酸素系の官能基を作ることにより接着性を向上させていることがわかった。さらに、コロナ放電によっても、ePTFE表面近傍のフィブリルの切断や酸素系官能基の存在が確認され、コラーゲン付着に関しては同様の結果が得られる可能性があることを明らかにした。コラーゲン塗布されたePTFEにHeイオンビーム照射することによっては、XPS測定の結果、ほとんど変化は見られないが、色の変化から一部コラーゲン分子の切断が起こっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の実施計画として、イオンビーム照射後のePTFE基材表面の構造を明らかにし、ePTFE表面のコラーゲンの接着性との関係を明らかにすることを実施計画として挙げていた。イオンビームによって、ePTFE表面近傍のフィブリルが切断されてコラーゲンが隙間に入りやすくなることや、表面に酸素系官能基が形成されることによって、接着性を向上させていることを突き止めた。コロナ放電によっても同様の結果が得られることを明らかにしている。それゆえ、ePTFE基材の表面構造の評価はかなり進んでいると考えている。接着性そのものの評価については現在進行中である。当該年度の達成度としては、おおむね順調に推移しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、コラーゲンのePTFEへの接着力を測定する試みを行うために、装置の作製を行っている。接着力について、イオンビーム、コロナ放電、プラズマ処理の各処理とその処理時間の依存性等を検討し、どのような条件が最適であるかを検討する。また、コラーゲン塗布したePTFEにHeイオビーム照射したものの表面について、コラーゲンがどのように変化しているかを探る。 上記に加えて、コラーゲンコートePTFEシート表面における細胞接着性と血小板吸着挙動の評価を行う。ePTFE表面へのコラーゲンコーティング条件とイオンビーム照射条件を検討し、ビーム照射前後の血管内皮細胞接着性、血小板吸着挙動の評価を行う。評価法としては、光学顕微鏡による表面の直接観察、及び免疫染色、酵素免疫測定等の免疫化学的手法により定量的に解析する。 前項の細胞接着性・血小板吸着挙動の評価結果と前年度に行った表面処理基材の分析・評価結果を踏まえて、基材の表面構造・表面物性と生体分子(細胞・血小板)との相互作用の関係を明らかにし、バイオインターフェースの設計指針を示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の未使用額は1,098円発生しており、平成25年度の研究計画に組み込む。平成25年度は、主に、細胞接着性・血小板吸着挙動の評価のための消耗品として使う予定である。
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