研究課題/領域番号 |
24656405
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
樽田 誠一 信州大学, 工学部, 教授 (00217209)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ構造 / 透明材料 / 結晶化ガラス / マイカ / 電気伝導 |
研究概要 |
1.金属銀ナノ粒子が析出した透明なマイカ結晶化ガラスの作製と性質: Ag2O添加量をしても、Ag2O無添加と同様に、母ガラスを700℃で加熱すると、透明なマイカ結晶化ガラスが得られた。だだし、Ag2Oを添加量すると、黄色あるいは薄褐色に着色し、これは析出したAgによるプラズモン吸収によると考えられる。800℃以上で加熱すると、XRD分析より金属Agの析出が確認された。加熱温度が高くなると、着色が濃くなり、透明性が低下した。Ag2O添加量が増加すると、マイカの底面間隔が大きくなる傾向にあり、マイカ層間にAg+イオンが挿入することが推測された。得られたマイカ結晶化ガラスの微構造を観察すると、金属Agナノ粒子の析出が確認された。このAg粒子は、Ag2O添加量が増加すると、より微細になり、Ag2Oを最大25wt%添加したが、その際に得られた試料中のAg粒子の大きさは2-10nmであった。得られた金属Ag析出マイカ結晶化ガラスの電気伝導度を測定した結果、Ag2O無添加と大差なかった。これは、Ag粒子が連続相を形成していなかった結果といえる。 2.金属銅ナノ粒子が析出した透明なマイカ結晶化ガラスの作製と性質: Cu2Oを添加すると、母ガラスは青あるいは濃緑色をしており、Cu+イオンがCu2+イオンへ酸化したことが推測された。マイカ結晶化ガラスは得られたが、着色により透明性は低かった。母ガラスを650-750℃以上で加熱すると、Cu2Oが析出し、一部の試料では800℃で金属銅の析出が確認された。Cu+イオンは酸化され易いため、Ag+イオンより金属に還元されにくかったといえる。微構造を観察すると、Cu2Oと推測されるナノ粒子の析出が確認されたが、Agの場合と異なり、マイカ結晶中に集中して析出していた。得られた試料の電気伝導度を測定した結果、Cu2O無添加の場合と大差なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の交付申請書に記載した研究実施計画の内容が、概ね実行された。ただし、母ガラスを作製する際に用いる白金容器が原料のAg2Oと反応し、白金容器に穴が開き、試料が溶出してしまうということが発生し、Ag2Oを30wt%以上添加できていない。また、Ag+イオンがAgへ還元するメカニズムについては、試料中のフッ素成分が揮散することによると推測しているが、それを確かめる熱分析が、現在、依頼先で行われている。
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今後の研究の推進方策 |
目的としている、電気伝導性を有する透明なマイカ結晶化ガラスは、平成24年度の研究結果より、Ag2Oの添加量を多くすることで達成できることが示唆された。しかし、上述のようにAg2Oを30wt%以上添加できていない。そこで、より多くのAg2Oが添加できるように、容器を厚くするなどの工夫をするとともに、添加したAg+イオンを効率よく還元して、より多くのAg粒子を析出させることが有効と考えられる。Ag+イオンを効率よく還元するために、以下のことを実施する。 (1) Ag+の原料として、AgFあるいはAgClを用いる。これにより、試料作製中に、より多くのフッ素成分あるいは塩素成分が揮散して、より多くのAg+イオンがAgへと還元されることが期待される。 (2) 還元剤として知られている酸化スズ(SnO)の添加し、Ag+イオンの還元を促進させる。 (3) Ce2O3あるいはCeF3などを原料としてCe3+イオンを添加する。ケイ酸リチウム塩系のガラスにCe3+およびAg+イオンが含まれていると、そこに紫外線を照射することでCe3+イオンがCe4+イオンへと酸化され、Ag+イオンは還元されて金属Agが生成することが知られている。そこで、試料中にAg+イオンの他に、さらにCe3+を添加し、それを結晶化させる際に、紫外線(312nm)を照射して、Agへの還元を検討する。 平成24年度の結果より、Cu+イオンは酸化されやすく、金属Cuに還元されにくいため、初めにAg+イオンの有効な還元手法を検討し、それをCu+イオンの還元手法として応用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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