ニッケル基超合金単結晶合金中に含まれるデンドライト境界は,両側の結晶方位が0.1°~0.2°程度異なる極小傾角粒界となっており,その界面には幾何的に要求される転位が存在する.この転位がクリープ変形時のクリープ転位の源になっていると考えられるが,この亜粒界は結晶成長方向に長く伸びており,結晶成長方向への応力によるクリープ変形においては縦ラフト形成条件下と横ラフト形成条件下で転位の結晶内部へのクリープ転位の放出形態が異なることが予想される.本研究で結晶成長方向と垂直な方向への荷重を加えたクリープ変形試験を行うことで,亜粒界からの転位の放出とクリープ変形との関係を求め,クリープ変形におよぼす亜粒界の空間的分布の影響を明らかにする.また,亜粒界が試料内に存在しない場合のクリープ変形についても明らかにすることを試みた. まず結晶成長方向(亜粒界伸張方向)に平行,および垂直な方向へ圧縮応力を加えたクリープ試験を行った.この結果,引張クリープと比較して圧縮クリープの強度は非常に大きく初期クリープ歪も小さいことが明らかとなった.これはクリープ転位の亜粒界からの放出の容易さが引張・圧縮応力下で異なることを示している.これにより予想通り,亜粒界の形態が初期クリープに大きな影響を与えていることが示唆された. また,亜粒界を内部に含まないマイクロ試験片を用いることができる高温低応力クリープ変形試験の試験装置を開発した.この装置を用いたクリープ試験については現在も進行中であるが,これまでの結果は巨視的な試験片の場合と変わりなく予想とは異なる結果となっている.
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