研究課題/領域番号 |
24656413
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
奥山 喜久夫 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00101197)
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研究分担者 |
荻 崇 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30508809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 蛍光体 / レアアースフリー / 酸窒化物 / 粉体工学 / 化学工学 / 高輝度化 / 軟X線吸収分光測定 |
研究概要 |
白色LED用のレアアースフリー酸窒化物蛍光体BCNOの高輝度化、発光メカニズムの解明、白色発光する蛍光体の合成について検討し、以下のような成果を得た。 (1) BCNO蛍光体のN源、C源として、これまで尿素、ポリマーを用いていた2種類の原料を窒素含有ポリマーのみで供給し、原料の削減を行い、発光特性に及ぼす影響について検討を行った。この結果、最適な熱分解温度を持つ窒素含有ポリマーをすることで蛍光体の窒化が促進され、発光特性が向上することが明らかとなった。また窒素含有ポリマーであるポリエチレンイミンの添加量を変化させることにより蛍光波長を388 nmから485 nmまでシフトさせることに成功した。 (2) 軟X線吸収分光測定(SPring8で分析を実施)によるBCNO蛍光体の電子状態、結合状態の解析を行った。窒素含有ポリマー添加量の異なる試料の解析を行った結果、B-N結合、B-O結合の存在が明らかとなった。さらに、窒素含有ポリマー添加量を増加させることによって、B-O結合からB-N結合へ結合状態が変化していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のレアアースフリー酸窒化物蛍光体BCNOのi)高輝度化、ii)発光メカニズムの解明、iii)白色発光する蛍光体の合成という目的があるが、i)については、窒素含有ポリマーを用いることでこれまでの発光特性が120%向上できた。ii)については、軟X線吸収分光測定(SPring8で分析を実施)により、B-N結合、B-O結合の存在を明らかとし構造解明に近づいた。 以上より、本研究は、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について以下に示す。 1)高発光効率・高輝度BCNO蛍光体粒子合成の検討の実施:H25年度に引き続き、高機能な酸窒化物蛍光体粒子が合成できる条件を検討する。2) ビーズミルプロセスによるBCNO蛍光体粒子のモノマー中への分散:二軸型の連続式ビーズミルプロセスを用いて、合成したBCNO酸窒化物蛍光体粒子のモノマー中への高濃度分散について検討を行う。ここでは、粒子濃度、ビーズミルの回転数、処理時間が分散液中の粒度分布、粒子の結晶構造、蛍光強度へ及ぼす影響を実験的に評価する。効率良く実験を実施するために研究手法の詳細は、申請者らの論文(Inkyoら: J. Colloid Interface Sci., 304 (2), (2006))を参考にする。3) BCNOモノマー分散液の樹脂化・白色LEDデバイス用発光素子作製:ビーズミルプロセスによって作製されたBCNO酸窒化物蛍光体分散溶液を用いて、バーコーティング法(現有設備)を用いて成膜した後、加熱することでポリマー化し、BCNO蛍光体が分散して含有された樹脂を作製する。作製した樹脂を用いて白色LED用の発光素子を作製し、量子効率・平均演色性をLED測光・測色装置シリーズにより評価する。BCNO粒子径、ポリマー化の条件などの最適化を実施する。研究手法は申請者らの論文(Kaihatsuら: Electrochem. Solid State Lett., 12(3), (2009)) を参考にする。作製したBNCO蛍光体白色LEDは市販の蛍光体(YAG:Ce)を用いた場合と性能の比較を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、蛍光体粒子合成、分散、白色LEDへのデバイス化、作製した白色LEDの性能評価を実施するため、これらに関する経費を必要とする。消耗品としては、蛍光体粒子合成および計測・特性評価に必要なガラス器具、セラミックスおよび金属材料、試薬、ガス等に加え、ビーズミル装置による蛍光体粒子分散実験および白色LEDのデバイス化に必要な材料、試薬等、電子部品が必要である。旅費としては、調査・研究旅費の他、国内外の学会での研究成果の発表・情報収集のために執行する。謝金は、大学院生に依頼する計測、特性評価、データ整理といった実験補助に対して支払う。他に合成した蛍光体粒子の委託分析費、研究論文発表のための投稿料、本研究課題の報告書作製費用として使用する。
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