研究課題/領域番号 |
24656414
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
金子 賢治 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30336002)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電子線トモグラフィ / 原子分解能 |
研究概要 |
「目的」 本研究では、原子分解能を有する電子線トモグラフィ法の確立と原子分解能での材料の立体的観察を目的としている。H24年度はこの目的を達成するための材料として比較的容易に入手可能であり、かつナノ粒子を形成することが可能な金を対象材料として選んだ。 「概要」 観察対象の材料、金ナノ粒子、を電子線トモグラフィ法による観察のため酸化物などの支持基板やアモルファスカーボンに担持する必要がある。これまでに首都大学の春田らが金の錯体を酸化チタニウム上に吸着させ、金ナノ粒子を析出させることに成功していることから、本研究では、メソポーラスシリカの一種であり六方構造を有するSBA-15中に酸化チタニウムを吸着サイトとして形成し、析出沈殿法を用いて金ナノ粒子を担持し、電子線トモグラフィ法を用いることにより立体的に金ナノ粒子の分散状態を解明した。 金の前駆体にはHAuCl4:4H2Oを用い、0.1 M NaOHを滴下しpHを6.5~7.0に調整した後に析出沈殿法を用いTiO2-SBA-15の細孔内へのAuナノ粒子を担持した。前段階の微構造解析には走査透過型電子顕微鏡を用いた原子分解能での原子番号コントラスト法や組成マップを取得している。細孔内部の約3.0~5.0nm径である金ナノ粒子について高分解能観察を行ったところ、多くの金ナノ粒子が酸化チタニウム微結晶へ優先的吸着し担持されていた。また、原子番号コントラスト法と電子線トモグラフィ法を組み合わせ、SBA-15の細孔内部における金ナノ粒子の形態並びに立体的な分散状態(粒子間距離や密度)を明らかにすることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数ナノメートルの空間分解能で立体的な情報を得ることは成功している。しかし、本来の目的は原子分解能を有するナノ粒子等の形態解析であることから、更なる分解能の改善が求められる。2次元透過型電子顕微鏡像や走査型透過電子顕微鏡像では原子分解能を有することが可能であることから、今後、特異な包囲からの限定された原子分解能像などを得ることにより可能であると期待している。また、H24年度の結果から、金ナノ粒子は電子線照射下では損傷を受けやすいためか、長時間の電子線照射下において形態が不安定であることが判明している。このため、今後はより電子線照射損傷を受けにくいナノ粒子材料を用いる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
より電子線照射下で損傷を受けにくいナノ粒子材料を用いる必要があることから、酸化物に含有された貴金属、セラミックスナノ粒子や合金中の析出物といった別の試料を早期に探索し、特異な包囲からの限定された原子分解能像などを得、電子線トモグラフィ法を適用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の大部分を透過型電子顕微鏡の使用料として費やす。また、情報収集や研究成果発表などのための海外出張を予定している。
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