当初の目的は結晶性を有するナノ構造体の原子配列を三次元的に可視化するものであった。研究計画では走査透過型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用い、幾つかの低指数帯のから高空間分解能像を観察し、それらの像から各元素の原子位置を立体的に可視化することを目的としていた。観察対象試料の厚みは、試料厚みと原子コントラスト像が線形に比例する厚みが必須であることから、約10ナノメートル未満を想定し、極微細粒子を観察対象試料とした。これらの対象としたナノ粒子(金ナノ粒子)は電子顕微鏡内で照射ダメージによる損傷が激しかったことから、原子分解能の立体的な可視化を目指すだけでなく、平行してエネルギーフィルタリング透過型電子顕微鏡と電子線トモグラフィ法を組み合わせるなど、元素識別を高空間分解能で立体的に行うなどの観察もを遂行した。 従来、触媒作用を目的とし、金ナノ粒子を酸化物に担持する場合、合成の熱処理過程や触媒反応中に粒径が肥大化してしまう。この肥大化現象はメソポーラスシリカ材等を用いることによりある程度回避することは可能である。しかし、完全に金ナノ粒子の肥大化を避けることは困難で有ることから、金ナノ粒子の移動を防ぐアンカーポイントとしての効果を期待してチタニアナノ粒子を埋め込み、ナノ複合材料の合成を行った。この材料にエネルギーフィルタリング透過型電子顕微鏡と電子線トモグラフィ法を適用し、組成情報を反映した三次元ナノ情報を得ることにより、金ナノ粒子とチタニアナノ粒子の相関関係を解明することに成功した。これらの成果は国際会議(EMSI2013、FEMMS2013、IUMRS-ICA2013)で発表している。 また、形状から厚み方向等の原子数を外挿することにより、セリアナノ粒子の原子分解能三次元体を疑似的に構築することにも成功している(未発表)。
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