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2012 年度 実施状況報告書

新しいタイプのジルコニウム基マルテンサイト変態による形状記憶と超弾性の可能性

研究課題

研究課題/領域番号 24656417
研究機関熊本大学

研究代表者

松田 光弘  熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80332865)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード形状記憶・超弾性 / マルテンサイト変態 / 電子顕微鏡 / 構造・機能材料 / ジルコニウム
研究概要

本研究は申請者が発見した新しいタイプのZr基マルテンサイト変態を利用して形状記憶や超弾性特性を見出すことが目的である。さらには研究期間内にNi元素の代替材として、PdやPt, Cuなどを用いたNiフリー形状記憶・超弾性合金のための合金設計についても検討する。本年度は以下の2項目について調査を行った。
1. Zr-(50-X)at%Co-Xat%Ni合金の形状記憶・超弾性合金に関する検討
Ni置換量の増加に伴いマルテンサイト変態温度は上昇し、熱ヒステリシス(Af-Ms点)は減少することがわかった。また4mm(w)×30mm(l)×0.3mm(t)の試験片を用いた簡易曲げ試験により形状記憶特性を評価した結果、Zr-37Co-13NiおよびZr-38Co-12Ni合金において約40%程度の形状回復率を示した。さらに最も高延性を有するZr-39Co-11Ni合金において、室温にて10~15%引張歪を加えた後に除荷した結果、2%程度歪が回復するなど超弾性特性を示した。これらを電子顕微鏡により観察したところ、マルテンサイト相と母相の界面に多数のマイクロクラックが存在していた。したがって、本合金系の高延性化には加工誘起マルテンサイト相の生成によるTRIP現象に加えて、新たにマイクロクラックの形成も関与するものといえる。
2. NiフリーなZr基形状記憶・超弾性合金の設計
NiやPdと同族のPt元素を用いて、機械的性質と組織について調査を行った。Zr-(50-X)at%Co-Xat%Pt合金において5%Ptまでは延性が向上し、室温にて全伸び約15%と極めて優れた値を示したが、それ以上置換すると熱誘起マルテンサイト相が生成し、延性は低下した。また本合金においてもマイクロクラックが存在していた。組織および変態点など一連の結果から、Pt置換量が4%までは超弾性特性を示す可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度はZr-Co-Ni合金に対して形状記憶・超弾性特性の調査を行うこと、またNiフリーな形状記憶・超弾性合金を開発するための基礎的データ(強度・延性・硬度・マルテンサイト変態点・微細組織など)の収集を主な目的とした。年度当初に企画した実施計画に沿って研究は進んでおり、さらに形状記憶・超弾性合金の開発に際し極めて重要となる延性の問題に対して、新たにマイクロクラックの存在を見出しており、それらと材料特性との関係も明らかにするなど研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

H24年度と同様に、今後も申請当初の計画に沿って研究を実施する。H25年度が本申請課題の最終年度となることから、課題全体の目標である「新しいタイプのジルコニウム基マルテンサイト変態による形状記憶と超弾性の可能性」について研究成果を報告するとともに、形状記憶・超弾性合金の開発に対して、「組織制御」ならびにNiフリーな元素を用いた「マテリアルデザイン」による合金設計への指針を明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

H24年度研究費残金およびH25年度申請の研究費により、本研究の遂行に必要不可欠な消耗品および備品を購入し、学会発表や論文投稿により研究成果を公表する。設備備品については、合金そのものの作製装置あるいは形状記憶・超弾性特性の温度範囲を調査する熱分析装置などの購入にあてる。旅費に関しては、申請者が所属する学会の年次大会(年2回)にて報告するとともに、海外の研究者に対しても直接発信するため12月に開催の国際会議にも出席する予定である。その他、本研究課題に関して少しでも読者層が広いImpact factorの高い雑誌への投稿を試みる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Enhancement of ductility in B2-type Zr-Co-Ni alloys with deformation-induced martensite and microcrack formation2013

    • 著者名/発表者名
      M. Matsuda, Y. Iwamoto, Y. Morizono, S. Tsurekawa, K. Takashima, M. Nishida
    • 雑誌名

      Intermetallics

      巻: 36 ページ: 45-50

    • DOI

      dx.doi.org/10.1016/j.intermet.2013.01.008

    • 査読あり
  • [学会発表] マルテンサイト変態およびマイクロクラックによるB2型ZrCo基合金の高延性化2012

    • 著者名/発表者名
      松田光弘、岩本芳明、高島和希、西田稔
    • 学会等名
      社団法人日本金属学会2012年秋期講演大会(第151回)
    • 発表場所
      愛媛大学城北キャンパス
    • 年月日
      20120917-20120919
  • [学会発表] Zr-Ni-Co合金のマルテンサイト相に及ぼすCo濃度の影響2012

    • 著者名/発表者名
      田中武勇樹、松田光弘、高島和希
    • 学会等名
      日本金属学会九州支部・日本鉄鋼協会九州支部・軽金属学会九州支部共催 平成24年度合同学術講演大会
    • 発表場所
      北九州国際会議場
    • 年月日
      20120609-20120609

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公開日: 2014-07-24  

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