研究課題/領域番号 |
24656423
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 宏司 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (70344166)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 機能性材料 / 圧電材料 / 形状記憶合金 / スマートストラクチャ / センサ / アクチュエータ |
研究概要 |
平成24年度は基礎研究に重点を置き(1)水熱合成法で製膜する上での最適な条件の探索、(2) 形状記憶効果,超弾性効果,圧電効果,焦電効果の特性の評価の2つの研究項目について研究を行った。 (1)水熱合成法で製膜する上での最適な条件の探索では、従来の水熱合成法では核付けプロセスにおいてチタン基板からもチタンが供給されるが,ニッケルチタン基板においては,その供給が不十分であるため,核づけプロセスにおいてもチタンを供給する必要があったが、そのチタンの供給をコントロールすることにより、チタンの含有率が低い形状記憶合金だけでなく、ステンレスなど全くチタンを含まない材料への成膜に成膜に成功した。 また(2) 形状記憶効果,超弾性効果,圧電効果,焦電効果の特性の評価では、複合化することによりそれぞれの効果が連成して起こるため,それぞれの効果を正確に測定することは従来の測定方法では困難であったが、超弾性状態にした複合繊維の変形を表面の圧電薄膜で測定を行う事により、形状記憶効果と焦電効果の影響を無くし、超弾性状態の伸び変形による圧電効果を評価を行った。PZTなどの圧電性セラミックスの最大変形量は高々0.1%程度であるが、水熱合成法で作成したPZT薄膜は密度が低く柔軟性に富むため、形状記憶合金の超弾性効果による弾性変形(5%程度)でも剥離が起こらず、変形量を正確に測定することができることが分かった。 また有限要素法を利用することにより、4つの効果の連成解析を行い、視覚的にそれぞれの効果が連成して起こることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画をしていた研究テーマについては、ほぼ計画通り実施することができている。 水熱合成法によるPZT薄膜の作成においては、水熱合成法装置自体の改良、使用する溶液の最適化を行うことにより形状記憶合金上への成膜はほぼ100%の成功できるようになった。また本研究過程において、形状記憶合金だけでなく、チタンを全く含まないステンレス基板表面への成膜にも成功している。今後はさらなる条件の最適化を行うことにより、多種多様な構造体への成膜についても研究を発展させていく事が可能である。 形状記憶効果,超弾性効果,圧電効果,焦電効果の特性の評価では、超弾性状態にした複合繊維の変形を表面の圧電薄膜で測定を行う事により、形状記憶効果と焦電効果の影響を無くし、超弾性状態の伸び変形による圧電効果の連成について評価を行うと共に、デバイスとしての機能限界について評価を進めている。 また本研究の主目的である形状記憶効果,超弾性効果,圧電効果,焦電効果のそれぞの効果の影響については、有限要素法ソフトANSYSを利用することにより、温度や力、電圧を変化させた時に4つの影響がそれぞれ連成して起こることを、視覚的に示すことができた。今後は解析をさらに進めていくことにより、4つの効果が打ち消し会うのではなく、助け合い相乗効果が起こるようなデバイス設計を行うことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は応用研究に重点を置き,(1)複数の機能の特長を利用したセンサ・アクチュェータの設計(2)複合機能デバイスの試作・評価の2つの研究を実施する。 (1)複数の機能の特長を利用したセンサ・アクチュェータの設計では、すでに有限要素法ソフトANSYSを利用することにより、それぞれの効果が連成して起こることを起こることを、視覚的に示すことができているが、25年度は4つの効果が打ち消し会うのではなく、複数の機能が共存し,シナジー効果が得られるようなデバイス設計を進める。たとえば大変形は形状記憶効果を用いて,微小変形には圧電効果を用いるハイブリッド型アクチュエータ,形状記億効果による変形量を,圧電効果や焦電効果で読み取るセンサ,アクチュエータデバイス,超弾性効果と圧電効果を利用した発電システムの設計を行い,本ハイブリット多機能デバイスが有効であることを示す。 また(2)複合機能デバイスの試作・評価として、個々の機能の利点を生かし欠点を他の機能で補った大変形を形状記憶効果で行い,精密位置決めを圧電効果で行う粗動微動アクチュエーターや,形状記憶合金による変形を圧電材料でモニタリングするセルフセンシングアクチュエーターの設計・試作・評価を行うことにより,本デバイスがセンサ・アクチュエータシステムとして有効であることを示す。 そのほかに当初の計画では無かったが、引き続き水熱合成法装置の改良を進めることにより、PZT薄膜の性能向上を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費は繰り越した68万円と次年度予算90万の合計158万円である。 研究費の使用計画としては物品費としては、120万円を計上している。その内訳として、 デバイスの試作用として小型3Dプリンタ(35万円)の購入を行う。さらに水熱合成法関連の薬品、材料費、消耗品として85万円を計画している。 旅費としては、研究成果の発表のための国際学会参加のため30万円を計上している。 その他の経費として論文の投稿、学会参加費として、8万円を計上している。
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