研究課題/領域番号 |
24656424
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
垣内田 洋 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 主任研究員 (40343660)
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キーワード | ガラス基板 / 大面積化 / バッファ層 / 成膜前処理 / 成膜後処理 / レーザ改質 / 表面熱伝達 / 膜品質向上 |
研究概要 |
交付申請書に記載の平成25年度目標「二酸化バナジウム(VO2)フレークの成膜面積の拡大と対流熱伝達の評価」を進めた。また、前年度(平成24年度)の研究遂行で必要性が明らかになった「液相法の後処理工程」および「膜質の基板依存性の確認」を行った。以下で詳細に記す。 VO2フレークの成膜を、サファイア基板から面積拡大し、ガラス基板で試みた。サファイア基板での大面積成膜は、実用化を考えるとコスト的・技術的な不利があるため、これをガラス基板に代えることは有意義である。しかしその反面、サファイア基板の場合に比べ、VO2を安定に成膜することが容易でない。そのため本研究では、作製条件の調整最適化に併せ、基板前処理、バッファ下地層の形成、後処理工程で、その安定化を図った。また、放射および対流成分を含む総合表面熱伝達率を評価するための装置および測定解析手順を構築した。このシステムで、まずガラス等の市販材料表面で装置の信頼性を評価した。その結果、本装置で測定信頼性を確保するためには、ある程度大面積の表面が必要で、VO2フレークをそのような大面積基板で成膜する必要があるとの課題に至った。一方、VO2フレーク膜の品質を高めるため、ガラス基板での成膜条件の最適化に加えて、成膜前の酸化チタン(TiO2)バッファ層による効果、成膜後の熱処理およびレーザ改質の効果を調べ、知見を得た。 上述のように、表面熱伝達をある程度信頼を持って評価するためには、さらに成膜面積の拡大を引き続き行っていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の目標である「VO2フレークの成膜面積の拡大」に取り組んだが、もう一つの目標「対流熱伝達の評価」を高い信頼性で実現するまでのレベルに達せず、平成26年度も引き続きを行う必要がある。一方、本研究の中で必要性が新たに確認された「液相法の後処理」および「膜質の基板依存性の確認」については、ガラス基板への展開をより進めたことで、ある程度は達成したと考えるが、平成26年度は、ガラス基板上でより高品質の成膜を継続して進める必要がある。本年度購入したレーザ照射による膜質改良については、照射による効果が見られるものの、現状では見込みに到達しておらず、引き続き進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、申請時の計画通り、引き続き「VO2フレーク成膜面積の拡大と対流熱伝達率の評価」に取り組み、最終的な成果を得る。具体的には、VO2フレーク膜の温度による表面熱伝達制御性を調べ、本研究の目的である対流熱伝達の寄与の有無を見極める。 現在の成膜サイズを200×200mmまで拡大して品質の良い膜を形成し、既に構築した表面熱伝達計測装置を用いて本研究の膜の機能性を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書の計画にあるように、平成25および26年度の二年を掛けて、課題「VO2フレーク成膜面積の拡大と対流熱伝達率の評価」に取り組む予定であるため、その進捗が後ろに若干ずれ、結果的に使用する予定だった額が年度を跨ぐことになった。とくに、成膜面積のさらなる拡大が必要であることが、平成25年度の後期で新たに判明し、その課題解決を平成26年度に持ち越さざるを得なくなったことが主要因である。 翌年度に繰り越させて頂く額については、大面積化成膜のための実験治具の構築に充てる。最終年度を合わせた残額については、成果発信費に充てる。
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