本年度は、表面熱伝達制御部材への応用を見据え、酸化バナジウムメゾフレーク膜の成膜面積拡大を進めた。また、従来型の酸化バナジウムの相転移では見られない、温度に対する光学挙動の機構解明に取り組んだ。以下、詳細を記す。 前年度(H25年度)、成膜基板をサファイアから石英ガラスに移行し、大面積化を見据えた技術開発を進めたが、本年度は、その技術を基に、100mm四方で成膜を実現した。これは表面熱伝達率の測定評価ができるサイズで、表面熱伝達制御部材への応用展開に繋がる。表面熱伝達は、放射と対流成分に分けられ、放射成分については、赤外分光測定により知見を得た。対流成分については、昨年度構築した専用測定システムで調べ、本研究期間終了後も継続し、効果を明らかにしていく。 本研究で見出した酸化バナジウムメゾフレーク膜の特異な光学挙動は、従来型の酸化バナジウムの相転移機構だけでは説明ができない特性である。本年度では、この挙動が酸化バナジウムの相転移を起源とした光散乱特性の変化であると考え、次の二つの機構、すなわち温度変化に伴うメゾフレークの①形状変化と②屈折率変化を仮定して解明を試みた。①については、温調システムを組み込んだ走査型電子顕微鏡と共焦点光学顕微鏡による直接観察を行った。②については、エリプソメータとX線光電子分光を用いて解析した。これらの結果から、①に比べて②の寄与が大きいという知見を導き出した。本年度の成果は、今後、実用的な熱応答型の熱伝達制御部材への展開を進める上で役立つ。
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