研究概要 |
水素はクリーンで再生可能なエネルギー源であるが,空気中の濃度が4%になると爆発する危険なガスである。したがって,エネルギー源としての水素の有効利用を拡大する上で,その安全性の確保は極めて重要な問題であり,そのために高性能水素センサが必要とされている。本研究の目的は,応答範囲,応答速度,ガス選択性に優れた水素ガスセンサを開発するために,貴金属含有ナノポーラス酸化物の新規作製法を考案することである。本研究では,独自のアイデアである貴金属含有ナノポーラス酸化物作製法(貴金属を含む三元系非晶質/ナノ結晶合金→「脱合金化処理」→貴金属含有ナノポーラス合金→「酸化処理」)を開発するとともに,作製した貴金属含有ナノポーラス酸化物センサの水素応答特性を評価した。 本年度は,昨年度の研究で明らかになった,微量貴金属添加によるCuナノポーラス体の微細化の検証を進めると共に, Ti-60Cu合金の電気化学脱合金化によるTiナノポーラス体作製方法を検討した。1から2at%のPt, Au, Agの添加により,多孔質Cuの孔径は数nmまで微細化することが分かった。これは表面で溶け残った貴金属原子がCu原子の表面拡散を著しく抑制するためであることが分かった。ナノポーラスCu2O-Ptセンサを作製して水素感受性を評価した結果,可逆的応答を示すが,Cu2O が半導体性で抵抗が小さいため,感度はあまり大きくないことが分かった。一方,Ti-Cu合金からのTiナノポーラス体の作製は電気化学的に貴なCuを選択溶解させる,異常脱合金化であるが,塩酸-硝酸の混酸を用いると,表面がTiO2で覆われたTiリッチTi-Cu合金ナノポーラス体を形成できることが分かった。
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