最近の大型放射光施設SPring-8を用いたX線マイクロトモグラフィー(CT)実験で、偶然、サンプリング定理で規定される物理限界を上回る高空間分解能を達成した。我々は、X線CTに不可欠な試料回転ステージに注目し、通常は分解能を悪化させるその回転ブレ(Wobbling)が予想外の高分解能化をもたらすものと結論した。これにヒントを得て、CTの高分解能化に応用できる技術開発を行った。ミクロ構造が複雑で微細構造の観察が容易な球状黒鉛鋳鉄を実験材料とし、大型放射光施設SPring-8のイメージングビームラインを用いた単色X線によるCT観察を行った。この実験では、撮像中に人為的にブレを起こさせながらCTの撮像を行い、3D画像の空間分解能を解析した。金属-空気界面でエッジレスポンス法によりTF(Modulation Transfer Function:空間周波数とコントラスト応答の関数で分解能評価の指標)を計測して空間分解能の指標とした。その結果、ブレの振幅、パターン、透過像の撮像枚数などの各種撮像条件と空間分解能の関係を定量的かつ詳細に評価することができ、高分解能が得られる条件を明示する事ができた。また、球状黒鉛鋳鉄の疲労亀裂発生および伝播試験のその場観察にこれを応用し、高分解能で破壊挙動を明瞭に可視化できることを実証した。これらを総合し、本案の手法を特に特殊なデバイス等を必要とせず、効果の確実なCT撮像の高分解能化手法として提示することができた。
|