研究課題/領域番号 |
24656440
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柴田 曉伸 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60451994)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 金属材料 / マルテンサイト / ナノ組織 / 電子顕微鏡法 |
研究概要 |
本研究は,ナノメートルオーダーの粒径を有するオーステナイト (ナノオーステナイト) から生成したマルテンサイトの組織特徴・結晶学的特徴を調べ,新たなマルテンサイト変態理論の確立を目指すものである. 当該年度は,硫酸ニッケルと硫酸鉄を用いた合金電析と熱処理により,粒径200nmのFe-Ni合金ナノオーステナイト膜を作製し,そこから生成したマルテンサイトの組織特徴・結晶学的特徴を透過型電子顕微鏡により調べた.その結果,ナノオーステナイトのマルテンサイト変態開始温度は非常に低く,ナノオーステナイトから生成したマルテンサイトの形態は等軸状であることがわかった.通常,粗大粒Fe-Ni合金ではレンズマルテンサイトや薄板状マルテンサイトが生成することが知られている.そのため,ナノオーステナイトから生成したマルテンサイトは,粗大粒オーステナイトから生成するマルテンサイトとは全く異なる形態を呈していることがわかった.また,ナノオーステナイトから生成したマルテンサイトは高密度の変態双晶を含んでいた.菊池線回折パターンを用いた詳細な結晶方位解析により,ナノオーステナイトからのマルテンサイト変態では,複数のマルテンサイトバリアントが生成し,バリアント選択則はこれまで粗大粒オーステナイトからのマルテンサイト変態において報告されていたものとは異なっていることを見出した. さらに,High Pressure Torsionを用いた巨大ひずみ加工と熱処理を組み合わせることによって,バルク形状の粒径200nmのFe-Ni-Cナノオーステナイトの作製にも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合金電析と熱処理により,粒径200nm程度のFe-Ni合金ナノオーステナイト膜を作製に成功し,ナノオーステナイトから生成したマルテンサイトの組織特徴・結晶学的特徴を明らかにした.さらに,High Pressure Torsionを用いた巨大ひずみ加工と熱処理を組み合わせることによって,バルク形状の粒径200nmのFe-Ni-Cナノオーステナイトの作製にも成功している.
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今後の研究の推進方策 |
ナノオーステナイトからのマルテンサイト変態挙動は,粗大粒オーステナイトからのマルテンサイト変態挙動とは大きく異なることが明らかとなってきている.今後は,透過型電子顕微鏡を用いた組織観察・結晶方位解析を進め,なぜ,ナノオーステナイトは特異なマルテンサイト変態挙動を示すのかに関して考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
透過型電子顕微鏡観察に必要な消耗品の購入に使用するとともに,研究成果を積極的に発表するための旅費や論文投稿料に使用する.
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