粒子同士に互いの表面を削らせてナノ粒子を発生させ、それらを削られた粒子表面にデンドライト(樹枝)状に再結合できれば、同じ材質のナノポーラス層による自己表面改質が実現する。得られた粒子表面の微細構造や、粒子集積によって粒子間に形成されるナノポーラス層を活用して、安価で多様な新材料の開発が期待できる。本研究では、シリカ粒子をモデル材料として、自己表面改質によるナノポーラス層形成の可能性を探索する。さらに、粒子集積構造の応用例として、超低熱伝導材料開発の可能性を検討する。 平成24年度は、粒子表面粉砕、並びに粒子同士の接合に及ぼす諸因子の影響を検討するために、粒子間に圧縮・摩擦作用を効果的に作用させることが可能な粉砕・改質装置の試作を検討した。本研究では、将来の量産化技術への発展を視野に入れ、回転運動により粒子間に圧縮力、並びにせん断力を繰り返し作用させる方法を採用し、装置を試作した。 平成25年度には、この装置を用いて、微粒子がガラスビーズやガラス繊維粒子表面に多孔質状に接合するためのプロセス条件を検討した。その結果、モデル微粒子として用いたシリカナノ粒子がガラス粒子表面に接合するプロセスは、ナノ粒子の粒子表面への付着過程と付着されたナノ粒子層の圧密過程で整理できた。この接合プロセスを基礎として、ナノ粒子をシリカ粒子表面に多孔質状に接合することに成功した。 平成26年度は、ガラス粒子表面の粉砕に及ぼす圧縮・摩擦作用の影響を検討した。その結果、粒子表面に作用するせん断力により、粒子表面から微粒子が生成することを確認した。また、粒子表面にナノ粒子ポーラス層を形成させたガラス繊維粒子集合体を用いて成形体を作製し、その熱伝導率を測定したところ、400℃で0.03W/(m・K)以下の熱伝導率であった。以上より、本研究で提案した方法を用いれば、超低熱伝導材料を創製できることを明らかにした。
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