n型GaNに対するTi基電極のオーム性発現には,電極成膜および熱処理過程でのGaNとTiの界面反応に伴って生じたN空孔がドナー元素と同様にふるまうことで電極直下のGaNに高キャリア濃度域が形成されることが支配的に寄与する.この電極成膜および熱処理過程では界面近傍においてGaNおよびコンタクト材が歪む.GaN結晶の歪はGaNの禁制帯幅を変化させることが知られており,これによってコンタクト界面でのショットキー障壁高が変化すると予測されるが,この歪を適切に制御してコンタクト特性向上まで検討された報告は見られない.本研究は,GaN単結晶基板上にTiを高周波マグネトロンスパッタ法により成膜し,成膜後さらには熱処理後の基板の変形量から界面直下のGaNの歪を算出し,その変化と電気伝導特性変化の相関を求めることを目的に実施した.本年度はTi成膜後のGaN基板に人工的な歪を重畳負荷することによって基板/電極界面の電気伝導特性がどのように変化するかを調査した. GaN基板上にTiを成膜すると,基板は膜面に対して凹状に変形し,電極膜直下のGaN基板には圧縮歪が生じる.電極を形成した側のGaN表面近傍に引張歪を導入するため,小型の四点曲げジグを用いて外力を印加して電気伝導特性を計測したところ,当初予想と異なり,電気抵抗が大幅に増加した.原因解明には至っていないが,局所的な外力印加によってコンタクト界面が損傷した可能性があると推測している.そこで,GaN基板を歪ませる応力が局所的に加わらないよう,GaN基板裏面に電極面と同様にTiを成膜することにより電極面側に引張歪を導入する方法を試みたところ,電気伝導特性が改善した.この結果は,GaN基板の電極面側に歪を導入することでコンタクト界面の電気伝導特性を変化させることが可能であり,この歪が引張であればコンタクト抵抗が減少することを明示している.
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