本研究では、モノを削っていくトップダウン手法であるリソグラフィ技術では困難である1ナノレベルの制御を行うため、金属ナノ粒子のアグリゲーションという自己集合的なボトムアップ手法をトップダウン手法に融合することで、原子レベルで制御できる新規微細加工技術の創製することを目的としている。 最終年度は前年度に引き続き、ポリマー薄膜中での金属ナノ粒子の形成メカニズムを解明することを試みた。さらに、実際にシリコン基板に金属前駆体を含んだポリマー薄膜を形成し、75 kVの電子線描画装置で微細パターンを形成することを試みた。金属ナノ構造体の解像度の計測とその制御の評価としては走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて行った。SEM-EDXやTEM-EDXによって金ナノ粒子や銀ナノ粒子の生成されているかどうかを確認した結果、ポリマー薄膜中でも金属ナノ粒子のアグリゲーションして金属ナノ粒子が生成されることが明らかになった。 これまでの本研究成果としてピコ秒パルスラジオリシス法を用いてテトラヒドロキシフラン(THF)中での初期過程反応の解明及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)をはじめとした有機溶媒中での金ナノ粒子と銀ナノ粒子の作製に成功した。さらに、ポリマー薄膜中でも溶液中と同様に金属ナノ粒子が生成することをSEM-EDXやTEM-EDXによって観察することで明らかにした。以上のように、本研究によって、トップダウン・ボトムアップ融合型微細加工による金属ナノ構造体の形成が可能であることが明らかになった。
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