研究課題/領域番号 |
24656448
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 秀士 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30117254)
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研究分担者 |
姜 賢求 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30599981)
長田 稔子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90452812)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | MIM / Ti合金 / 複雑大形化 / 脱脂プロセス / 寸法精度 |
研究概要 |
チタン合金は,その軽量性・強靭性・生体適合性といった特徴から,航空宇宙産業,人工関節等のメディカル分野,自動車用部材としても活用が進みつつある.しかし,チタン合金は難加工性材料であり,所望の複雑形状を得るために大きな製造コストがかかる. 本研究では,チタン粉末材料をベースとし,複雑・大形部材を安価に大量に生産する加工プロセスを提案・開発する.大形化が困難なため完全にあきらめられていた金属粉末射出成形法(MIM)に目を向け,合金特性を向上させた高機能・高性能次世代チタン部材の複雑形状・大形化については,既に予備実験を開始しており,平成24年度では従来のバインダ材料と脱脂法との組み合わせを検討し,プロセスの最適化を行ったが,サイズ的には従来の数倍程度のものを得ることができ、その寸法精度も粉末特性(特に粒度分布)や脱バインダならびに焼結条件を考慮することで、航空機部材用のISO規格に準拠する程度(±0.1mm)は得ることができた.ただ目標とする従来の10倍程度のサイズとするにはやはりバイダの開発が急務であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チタン合金部材のMIMによる大形化については,既に予備実験を開始しており,平成24年度ではその延長として従来のバインダ材料と脱脂法との組み合わせを検討し,プロセスの最適化を行ったが,例えば必要とされる航空機部材に関して,ISOに準拠した寸法精度(±0.1mm)は得られたものの,サイズ的には従来の数倍程度で,10倍程のサイズにはまだ開きがあり,従来の壁を打破する為,本研究のキーとなるポリイミドを用いた樹脂バインダおよびチタン合金粉末の前処理について次年度では検討を行うつもりである.
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今後の研究の推進方策 |
脱脂中,焼結開始に至るまでの間,粉体の形状を保つことを狙い,ポリイミドの微粒子をバインダに添加する.ポリイミドは熱分解温度が600℃程度であり,一般の樹脂に比べ非常に高温域まで分解されずにバインダとしての役割を演じることができる.これらの原料の混練および射出成形は,現有の混練機・射出成形機により行う.得られた健全な成形体の脱バインダならびに焼結は,従来通り,まずヘプタン気相中で溶媒脱脂を行い,その後,真空脱脂焼結炉を用いて,400~600 °Cにおける窒素ガス雰囲気での加熱脱脂に続いて,真空中1200~1350 °C×3.6 ksの焼結を施す.この際,新たな粒子バインダの添加がどのように作用するかを,各過程においての評価が重要である.具体的には下記のように実験を進める. 1.混練・射出時の粘度および流れ 2.脱脂時の粒子バインダの流出の有無 3.加熱脱脂時の成形体強度評価 4.プロセス中の形状測定.特に3の強度評価が重要である.加熱脱脂を中断し,得られた試料の圧縮試験を行うことにより,どの程度の荷重に耐えるか,すなわち大形化に伴う自重の増加にどこまで対応できるかを評価する.ここで得られた圧縮試験の結果をもとに,有限要素法解析を行い,理想的な条件での製品サイズの上限値を見積もる.また,チタン合金の焼結開始温度を低下させることも必要となる.例えば,チタン合金であるTi-6Al-4V合金部材の作製においては,一部を純アルミニウム粉末の形で添加することにより,低融点金属であるアルミニウムの液相発生による効果を得て焼結開始温度を下げることが可能であると予測されることから,脱脂温度と試料強度との関係を考慮しつつ他の合金系についても低温化を図っていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
大形試験片を実際に作製し,具体的な試料の評価を行う.本申請予算により新たに金型を準備し,大形試験片の成形を行う.試験片の形状や寸法を変えられるよう,入れ子式の金型にし,組み合わせによっては形状が複雑となるように工夫する.この試験片を用いて種々の条件で脱脂,焼結を行い,その形状,寸法より歪み等の形状評価を行い,作製可能な限界サイズを実証していく.合金材料開発についての研究もさらに進める.Ti-6Al-4V合金の合金粉末および混合粉末によるMIM特性の評価は既に実験を開始している.この他の混合粉末の組み合わせについては,粒径や粉末形状の違いにより,焼結開始温度のみならず得られる材料特性が変わってくる.プロセス中の最適化のみならず,高強度,高靱性化のための材料自体の最適化も同時に実行する.クロムやモリブデンをはじめ,数種の元素を添加し,最終的な組織の変化や機械的特性に及ぼす影響についての評価も行う.また,医療分野での用途を考え,ニオブを含む合金系についても原料粉の微粒子化といった工夫により,焼結開始の低温化に挑戦する.なお,本研究での実験や計測は学内の研究分担者と共に行い,適宜学生アルバイトを利用する.また,計算機解析やチタン合金の設計に関しては協力者の助言を仰ぎつつ研究を進める.ところで,寸法精度解析においてはこれまでも協力を仰いだサンディエゴ州立大学のR.M.German教授から助言を頂く予定で,そのための渡航費は平成24年度の残高で賄うつもりである.
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