研究課題/領域番号 |
24656449
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
正木 匡彦 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00360719)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属生産工学 / 溶接 / グラファイト / レーザー |
研究概要 |
本研究は、高出力レーザーを使用してグラファイト複合材料の溶接接合を試みるものであり、本年度は3年計画の初年度として焼結グラファイト棒の試行的な接合実験を行った。 本年度は、まず炭化ホウ素を溶剤として選択した。突き合わせたグラファイト棒の間に炭化ホウ素粉末を充てんし、高出力の半導体レーザーを集光して加熱することによりろう付けに近い形で炭素棒が接合できることを明らかにした。接合部の組織観察から、加熱時に炭化ホウ素が溶融し、そこにグラファイトが溶け込んでいる様子が見られた。十分な強度の接合ができているが、正確な強度については今後の調査となる。 今後の実験の準備として、溶接の雰囲気制御に使用するグローブボックスおよび酸素除去のためのゲッター(活性銅触媒)の整備を行った。その結果として溶接時の雰囲気の酸素濃度が1ppm以下の良好な環境を得ることができた。また、ファイバーカップル式の半導体レーザーの集光ヘッドおよび光ファイバーをグローブボックスに導入するためのフレキシブルな気密管を工夫し、無酸素雰囲気を長時間維持することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は三年計画の初年度であり接合のための予備実験の時期と位置付けていたが、炭化ホウ素を用いた接合に成功し、今後の方向性を見極めることができた点が大きな成果である。 従来、鉄や銅などの金属を融剤としたグラファイトの溶接接合は行われてきたが、炭化ホウ素のような炭化物セラミックスを用いた接合は本研究が初めてである。今後、炭化ホウ素に対して第三元素を添加した際の接合状態を網羅的に研究し、今後の発展的な研究の礎としたい。 また、初年度として試料雰囲気の制御など実験環境の整備を行い、来年度以降の実験が速やかに行えるようにした。特に、気密を維持したグローブボックスへの光ファイバーの導入については、比較的安価で単純な構造でありながら十分な性能を有するものが開発できた点が成果である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究において、炭化ホウ素を融剤としてグラファイト棒を溶接できることが確認できたことから、本年度は融剤に対する添加元素の効果を中心に研究を進める。具体的には、炭化ホウ素に対してシリコンや鉄などの元素を添加した場合の溶接条件の変化を調べる。また、ひっぱり試験などの強度試験を実施し、接合強度の最適化を図る。また、雰囲気中の酸素濃度を制御し、最適な接合条件を明らかにする。 本年度の研究では、接合する炭素材料として新たにC-Cコンポジット材料やグラッシーカーボンを用いた実験を行う。これらは非常に高い強度や気密性などの特徴を持った材料であり、これらの溶接接合ができれば産業機器に対するカーボン材料の可能性が大きく広がると考えられる。 融剤として使用している炭化ホウ素については、別途、溶融状態からの急冷によるアモルファス化の可能性や溶融状態を保持したX線構造解析などを行い、接合時の相転移における物性や構造を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の研究において、高出力の半導体レーザーを使用することによりグラファイト材料を溶接できることを確認したが、グラファイト材料の形状によってはレーザーの出力が不足する場合があることが明らかになった。そのため、本年度の研究費を用いて半導体レーザー素子を新たに購入し、その出力不足を補うこととする。近年、半導体レーザーの価格が下がっており、研究費の枠内において200W程度の出力の追加が可能である。なお、本研究の申請時にはグローブボックスの雰囲気として使用しているアルゴンガスの精製器を購入する計画であったが、これについては既存の精製器を改良することにより必要な雰囲気制御ができるように対処をする。 接合に用いる炭素材料として、C-Cコンポジットの丸棒とグラッシーカーボンの丸棒を購入する。
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