研究課題/領域番号 |
24656454
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 秀顕 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (10581746)
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研究分担者 |
前田 正史 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70143386)
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キーワード | 過酸化物 |
研究概要 |
本研究では過酸化物から構成される新規化合物の合成を試みるとともに,その組成・構造・化学的安定性といった諸性質を熱力学測定を中心とした調査により明らかにすることを目的としている.前年度(24年度)は,分解温度が約800度と比較的高い過酸化バリウム(BaO2)に注目し,酸素共存下で加熱した際の BaO2-BaO 間の変化を熱重量・示差熱分析を用いて観察した. 25年度は,BaO2 が生成する際に別種の元素を取り込んで複合化が進行する可能性について調査するため,BaO に他の酸化物加えて熱処理を施した.Ba と同様に他のアルカリ土類金属も過酸化物を形成することが知られるが,過酸化ストロンチウム(SrO2)の分解温度が約200~300度と報告されるように,単独では容易に分解する.一方,これらアルカリ土類金属の酸化物(BaO および SrO)は,高温で互いに溶解することが知られている.そこで BaO と SrO の混合粉末を空気中で加熱し,BaO2 が安定となる温度域で,その結晶構造に変化が見られるかを確認した.熱処理後の BaO-SrO 混合試料の XRD からは,生成した BaO2 の回折ピークが高角度側にシフトし,Sr が一部取り込まれることが示唆された.BaO2 に SrO2 が固溶するなどして安定な複合酸化物を形成するならば,異種元素の添加により過酸化物の安定領域を制御するとともに,新たな材料として利用の可能性について検討することができる. また,今後行う熱力学測定の予備試験として,前年度にひきつづきダブルクヌーセンセル質量分析装置を用いて,合金からの蒸気種の同定および定量を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過酸化物試料を高温で保持するための試料容器として金属および酸化物が不適であり,容器の材質を選定するための予備試験に時間を要した.また,空気中の水分や二酸化炭素と反応しやすい酸化物を取り扱うため,目的とする反応を観察するための実験手法を探索する必要があった.
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今後の研究の推進方策 |
酸素共存下で高温保持することで過酸化物の複合化が進行することを,XRD のみでなく熱重量・示差熱分析や組成分析によって確認し,定量的に評価する.さらに,新規化合物の生成が顕著となる熱処理の条件および手法を探索するとともに,BaO-SrO 系以外への酸化物系へ調査対象を拡大する.複合酸化物の熱力学的性質については,組成と分解温度の関係を調査するとともに,化合物と平衡する酸素分圧を系統的に調査し,生成自由エネルギー等を推定する実験を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では過酸化物を含む新規化合物の合成を試みているが,過酸化物は金属および酸化物と反応しやすく,試料を高温で保持するための試料容器の選定に時間を要した.また,空気中の水分や二酸化炭素と反応しやすい酸化物を取り扱うため,目的とする反応を観察するための実験手法の確立に時間を要した. 今年度の試験により,過酸化物の反応を観察するための容器として高温でも安定なホウ化物を選定した.ガス回路に脱酸炉を備えるなど,より厳密な雰囲気制御が可能な実験装置を作製し,目的とする高温反応の観察手法を確立する.
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