固体シリコン内不純物液相のマイグレーション技術に関して以下の検討を行った。 1) 固体シリコンのマイグレーションプロセスの基礎的検討 前年度に引き続き、Feを種々の濃度で添加した溶融シリコンを急冷して得た凝固シリコンにマイグレーション処理を施した。その結果、シリコン試料中に分散するFe-Si相は溶解して球状に変形した後に、温度勾配方向に移動することが分かった。この結果、シリコンマトリックス中のFe-Si液相の通過は部分的なものに限られ、マイグレーションプロセスにより結晶粒サイズが低下することが分かった。 2) マイグレーションによるシリコンの結晶性向上へ向けた、固体シリコン内不純物相の初期分布の制御 1)で液相が溶解した後に球状化することを抑制するため、シリコンの方向性凝固により不純物相を面状に配置することを目指し、純度99%の溶融シリコンからのリボンシリコンの作製を試みた。種々の引き上げ条件のもとで板状シリコン内の不純物相の分布を調査し多結果、メニスカスの伸展を維持しうる範囲で高速での引き上げを行うことにより、不純物相が面状に分布する傾向にあった。このように作製した板状シリコンをマイグレーション処理に供したところ、処理後の結晶粒サイズは1)に比べて向上したが、凝固後よりは小さかった。今後マイグレーションで高純度かつ高品質シリコンを作製するためには、凝固シリコン中の不純物相を広範な面状に制御することが重要であり、シリコン柱状晶の形成過程に及ぼす微量元素の影響を詳細に把握することが必要である。
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