材料中へ少量添加するのみで材料の機能が向上する希土類元素は原産国の戦略物資であるため確保が難しい。本研究は廃希土類磁石から希土類を1プロセスで回収するプロセスを開発する研究である。Fe-Nd(-Dy)-B磁石は主成分が安価なFeであるため、酸に溶解後に溶媒抽出等により分離することは酸を多量に用いることやFeがスラッジとして大量に排出されるなどの問題がある。本研究は、廃磁石から溶融塩中に希土類元素のNd、Dyのみを浸出することにより、Fe-Bは固体として回収する。一方、浸出したNd、Dyは溶融塩電解によりカソード上に金属として回収するものである。 昨年度は、溶融塩の選定と希土類磁石からの希土類の浸出分離について検討し、溶融塩中に98%前後の希土類が存在し、鉄は2%以下であった。今年度は処理量の増加とカソード電極上への析出について検討した。 アノードにタンタルで作製した箱電極を用いることにより、電解による磁石粉の塩中への落下が防止でき、さらに廃磁石の処理量の増大が可能となった。また、電解後のネオジム磁石は磁石内部からの浸出が起こったために磁石形状が崩壊し、浸出しやすい形状となりタンタル箱電極は有効に働いた。 各金属(Nd、Dy、Fe)のカソード分極曲線測定より、-2.0V付近で溶融塩の分解によるLiの析出、Nd、Dyの析出電位は-1.8V付近で、Feの析出電位は-0.6V付近であった。これらのことから、レアアースよりFeの方が析出しやすく、浸出時にレアアースのみを塩中に選択的に浸出する必要があることがわかった。 浸出電位-1.0V、析出電位-1.8Vで定電位電解することによってレアアースが選択的に浸出・回収可能であることがわかり、溶融塩中にレアアースが97%以上の組成で浸出し、また、レアアース組成95%以上の析出物が得られた。
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