研究課題/領域番号 |
24656461
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塚田 隆夫 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10171969)
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研究分担者 |
高見 誠一 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40311550)
竹中 信幸 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50171658)
齊藤 泰司 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (40283684)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中性子CT / 超臨界水反応場 / in-situ観察 |
研究概要 |
ナノ粒子の超臨界水熱合成において実際に使用されているSUS製流通式反応器を対象とし,反応器内部における原料と超臨界水の流動・混合状態を,中性子ラジオグラフィによりin-situ観察し,反応器内の流動・混合挙動に及ぼす諸因子(両流体の流量,超臨界水の温度,反応器内圧力,反応器幾何学形状等)の影響を明らかにすることを目的として,本年度は以下の項目を実施した。 (1) 中性子ラジオグラフィ用超臨界水熱合成装置の製作: ナノ粒子の超臨界水熱合成に利用している流通式反応器内の水密度分布を中性子ラジオグラフィにより3次元計測するために,中性子CT(コンピュータトモグラフィ)用装置を製作した。ここで,中性子線源が原子炉に限られるため,通常のCTとは異なり,撮影対象(装置)を回転させることで対応した。 (2) 中性子ラジオグラフィによる可視化実験: (1)の実験装置を使用し,中性子ラジオグラフィによる流通式反応器内混合部の流動・混合状態の可視化実験を行った。実験においては,①常温水(原料に相当)及び超臨界水の流量,②装置幾何学形状の影響を検討した。なお,実験は京都大学原子炉実験所の原子炉を利用した。 (3) 中性子透過像の画像解析: (2)により得られた中性子透過像から反応器内の3次元水密度分布を得るための画像解析手法を確立した。すなわち,CTに従い,装置を回転させながら撮像した中性子透過像データから,回転軸(z軸)方向の任意の位置における2次元断面(x-y面)の水密度分布を求めるために,画像の再構成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績で述べたように,中性子CT用超臨界水熱合成装置を製作し,これを利用した可視化実験を実施するとともに,中性子透過像から3次元像を得るための画像解析法を確立した。また,可視化実験を通して,反応器内部における原料と超臨界水の流動・混合状態に及ぼす各流体の流量及び供給法の影響を明らかにすることができ,当初の目的に対しておおむね順調に進んでいるものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 中性子ラジオグラフィによる可視化実験: 前年度に引き続き,超臨界水熱合成用流通式反応器内の水密度分布の中性子ラジオグラフィによる3次元可視化実験を行う。検討する影響因子は,常温水及び超臨界水の流量,装置内圧力,超臨界水の温度及び装置幾何学形状である。前年度同様,実験は京都大学原子炉実験所の原子炉を利用する。 (2) 超臨界水熱合成プロセスの数値シミュレーション: (1)の実験と同様の系に関する数値シミュレーションを実施する。数値シミュレーション結果と本実験結果を比較することで,現状の数値シミュレーションがどの程度超臨界水反応場における熱流動現象を定量的に説明できるかを検証する。また,得られた結果に基づき,超臨界熱流体解析の数値シミュレーションの問題点を抽出し,可能であれば精度向上のための方針を提示する。 (3) ナノ粒子合成実験との比較及びまとめ: これまで蓄積してきたナノ粒子合成実験結果(合成ナノ粒子のサイズ,粒径分布等)と,中性子ラジオグラフィにより得られた反応器内部の混合状態とを比較し,超臨界水熱合成反応器内の原料と超臨界水の混合特性と合成ナノ粒子の特性との相関を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験においては,装置改良費,中性子CT関連消耗品費等に充てるとともに,京都大学原子炉実験所での実験実施に鑑み,装置輸送費として使用する予定である。一方,数値シミュレーションにおいては,計算結果記録用媒体の購入を予定している。また,得られた研究成果を学会等にて発表するための旅費として使用することも考えている。 なお,次年度使用額が生じているが、3月執行済である。
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