本研究では、高性能酵素反応プロセスの構築に資する新規な固定化酵素多孔質ゲルの開発を目的とする。具体的には、我々が開発したエマルションゲル化法により作製される独立した孔(例えば数マイクロメートルの孔径)を持つ多孔質高分子ゲルを担体に用い、孔の中に酵素を包括固定した固定化酵素多孔質ゲルを開発する。このゲルは、酵素の自由な立体配置および良好な基質の拡散透過性により、従来の固定化酵素ゲルを凌駕する高活性の発現が期待できる。平成25年度は、油性媒体中で適用可能な固定化酵素多孔質ゲルの作製に成功し、作製可能な条件を見出した。具体的には、親油性モノマーを含む油相に不活性な微小水滴(ここに酵素を含ませておく)を分散させたW/Oエマルションの油相をラジカル重合反応でゲル化させる方法によりエマルションゲル(分散した微小水滴を内包した高分子ゲル)を作製し、次いでエマルションゲルの水相を洗浄除去して固定化酵素多孔質ゲルを得た。ゲルの多孔質構造をSEMで観察した。モデル酵素反応として酵素リパーゼを用いたエステル化反応(オレイン酸とエタノールの反応)とエステル交換反応(酢酸プロピルとペンタノールの反応)を行い、当該ゲルが適用可能であることを実証した。当該ゲルは、その反応速度がフリー酵素のそれより速く、良好な反応速度を有することを実証した。また、当該ゲルを繰り返し使用しても反応速度の明確な低下が見られなかったことから、酵素の漏出または失活が生じていないことが示唆された。
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