平成24年度は、空気中へのインクジェット吐出噴霧乾燥法によりヒト赤血球とほぼ同じ大きさ(平均径6μm)のヘモグロビン含有球状ゲル粒子の作製を実現した。平成25年度は、コーヒーステイン現象による凹みの実現を試みた。インクジェット吐出装置とは別に、内径30μm(外径0.1mm)のステンレス製極細針を用いた吐出装置も試作し、両方の装置を用いて、表面にフッ素樹脂をコーティングしたガラス板上に粘度の異なる数種類のアルギン酸ナトリウム水溶液(0.1wt%程度)を滴下し、着床後の液滴形状変化を顕微鏡観察により評価した。撥水面に着床した直後の液滴の接触角は高いが、液滴の乾燥収縮に伴って次第に減少し後退を始めた。やがて液滴表面はゲル化して着床面に固定化され、内部の水分移動によって中央部が凹むセルフピンニング(コーヒー現象)が発現した。凹みを持つゲル粒子の平均径は10μm程度まで小さくできることを確認した。液滴径の経時変化は、着床時の滴径とセルフピンニング開始時間で基準化され、初期液滴径に依らず相似形が保たれていることが明らかになり、既存の水分移動過程モデルでのシミュレーションが可能であった。一方、アルギン酸濃度をある程度以上に高くすると、セルフピンニング直前にできる表面ゲル膜が厚くなり、複数の凹みが出現することがわかった。更に水溶液にヘモグロビンを含有させた場合には、疎水面とヘモグロビン分子の親和力により着床後の液滴径の減少率は抑制されることもわかった。平成26年度は、日本血液代替物学会年次大会参加などにより得た当該技術の最新動向についての知見を加えて、化学工学会第80年会で成果を発表した。
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