研究課題/領域番号 |
24656479
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中川 紳好 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (70217678)
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研究分担者 |
辻口 拓也 金沢大学, 機械工学系, 助教 (10510894)
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キーワード | バイオ燃料電池 / 電極構造 / 酵素固定化 |
研究概要 |
申請者らの酵母エキスを用いるグルコース燃料電池では60℃の高い温度で、1Vもの高い電圧が得られている。この高い電圧を維持し、燃料電池の出力を増大させるために、酵素となる酵母エキスを電極表面に固定化することが有効と考え、酵母エキス水溶液にカーボンブラックと固定化材を混合したコンポジットスラリーによりゲル状の触媒層を形成し、電極表面に塗布担持する方法について検討した。カーボンブラックは高い比表面積と高い導電性をもつため、その表面に酵素を固定化することによって、電極過電圧の低減が期待できる。固定化材としてポリエチレングリコール、グルタルアルデヒド、TritonX-100, キトサン、アガロースを比較した。その結果、アノード電位をより低く(卑に)維持し、そして過電圧を低くでき、さらに酵母エキスの溶出がより少いものとしてキトサンが適していることが分かった。次に、キトサンを用いた触媒層形成において、酵母エキスを含んだコンポジットスラリーの調製法の検討を行った。スラリー中のキトサン割合、酵母エキス割合について、最適条件を得ることができた。さらに、コンポジットスラリーのカーボンペーパー電極への担持量がアノード電極電位およびアノード過電圧におよぼす影響を調査した。そして、その結果として最適担持量が存在することを明らかにした。過剰量の担持では、触媒層が厚くなり、その結果、反応関与物質の物質移動抵抗が大きくなることが考えられる。また、本固定化法においてメチレンブルーのメディエーターを使用すると、アノード過電圧が増大することも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画としていた酵母エキスの電極固定化法について、最適な固定化材と触媒層形成における最適条件を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた酵母エキスを固定化した電極をグルコース燃料電池に適用し、燃料電池としての出力特性を調査する。動作温度として70℃程度の高温度域までを対象とし、温度、グルコース濃度が電流-電圧曲線、定電圧発電試験を行い、電池出力を評価する。最大出力が得られる条件下で、数日程度の長時間発電を行い、その際の燃料槽の溶液組成変化、電極反応生成物を捉え、その結果を基に電流効率およびエネルギー変換効率を求める。この結果を基に、グルコース廃液からのエネルギー回収プロセスとしての可能性を検討する。 本固定化電極では、メディエーターにメチレンブルーを使用すると、電極過電圧の増大をもたらすことがわかっている。メディエーターの添加を必要としないバイオ燃料電池は、シンプルなシステムとなるため非常に魅力的であり、メディエーターレスで、どの程度の出力を得られるかについて注目したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
酵素固定化実験において、小面積の電極で評価が可能であったため、使用材料費が節約できた。また、予定した出張が学内業務と重なり、実行できなかった。 今年度は燃料電池セルの発電特性試験を必要としているが、効率化のためセルを複数作製するなどの費用として使用する予定である。
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