昨年までの成果を受けて、平成26年度はさらなる実験データを採取して提案装置の反応工学的な解析を進めたほか、流れと相間物質移動速度の同時シミュレーション技術の改良を行った。また、提案装置の新たな応用分野として粒子合成への適用可能性について検討した。 提案装置の反応工学的な解析に関する検討では、循環流量などの各種反応条件を変化させることによる物質移動速度の変化が見掛けの反応速度定数に及ぼす影響に着目した。循環流路長は、検討の範囲内では、反応速度に対する影響はほとんど見られなかった。一方、循環流量および液量を増大させると見かけの反応速度が低下する傾向が見られた。 流れと相間物質移動速度の同時シミュレーション技術の開発に関する検討では、昨年度に汎用シミュレーションソフトに組み込める独自の計算コードを開発している。しかし、この計算手法は、メッシュ依存性が強く安定した解が得られないなどいくつかの問題のあることが明らかとなった。本年度はこれらの問題の解決に取り組み、メッシュ依存性が無く、安定に計算を行うことのできる技術を開発した。 提案法は多相反応への適用を想定した反応装置であるが、検討を進めるうえで粒子合成への応用可能性が見いだされた。そこで、提案装置を用いて酢酸銅水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を混合し、塩基性酢酸銅粒子の合成を試みた。合成された粒子は、ビーカーを用いた旧来の合成法で得た粒子に比べ、品質の高い粒子の合成に成功した。提案装置を利用して混合することで、系内の濃度分布をより均一に保持した条件での粒子合成が可能になったためであると考えられる。
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