直径1mm、長さ1mのマイクロチューブを用い、十字型ジョイントを介して等量の臭化ベンジルトリフェニルホスホニウムとp-メトキシベンズアルデヒドを溶解させたジクロロメタン(第1油相)ベンゼン(第2油相)および水酸化ナトリウム水溶液(水相)を供給することで、水滴と油滴が交互に形成する液・液・液反応系を構築して、相間移動触媒反応であるWittig反応を行い、その生成物である1-メトキシ-4-スチルベンゼンのE体とZ体の生成をNMRにより確認した。その結果、スチルベンの反応収率は83%に達した。第2油相を加えない液・液系に比べて、ベンゼンを加えた液・液・液系とすることで反応収率が増加することを明らかにした。また、第2油相としてヘキサンイソオクタンなどの疎水性溶媒を用いた場合に比べてベンゼンを用いた場合が反応収率が高いことを明らかにした。回分反応器を用い2相系で反応を行った場合には、ベンゼンを溶媒として用いると、ジクロロメタンを溶媒にした場合に比べて収率が落ちることから、第2油相であるベンゼンの寄与は、反応の活性化が原因ではなく、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウムの油相から水相への移動過程および生成したスチルベンの油相への逆抽出などの物質移動過程が大きく影響していると考えられる。マイクロチューブ内の液滴の流動状態を観察した結果、チューブ内では油滴同士の合一によって一部で第1油相と第2油相が混合する現象も見られた。これは本研究で用いたマイクロチューブがテフロン系のチューブであったことが原因と考えられ、今後はガラス製マイクロチューブによる検討が必要である。
|