研究課題/領域番号 |
24656484
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
亀岡 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (60312823)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 準結晶合金 / 金属間化合物 / 準周期構造 / 濃度揺らぎ / リーチング処理 / 前駆物質 / 過飽和固溶体 / コンポジット触媒 |
研究概要 |
準結晶(QC: quasicrystal)は結晶(crystals)、アモルファス(amorphous)に続く第3の物質構造(新物質材料)として注目されている。そこで、本研究では、準結晶合金に着目して2つの観点から学理的材料研究を行った。1つ目は準結晶合金を触媒前駆物質(素材)として扱った。2つ目は、同一な構成金属種から成る異なる物質構造(結晶・準結晶・アモルファス)を有する合金系を研究対象として触媒材料特性を詳細に比較し準結晶構造の効果を調べた。これらの検討から、準結晶構造(準周期構造)が触媒特性に及ぼす効果を明確にするとともに準結晶合金の触媒材料への展開を図った。 本研究で扱った準結晶合金はいずれも触媒活性金属種を含んでおり、特異な構造(準周期構造)にもかかわらず容易かつ再現性良く良質なサンプルを調製できることから、触媒特性および表面物性などを調べるのには最適な金属試料である。我々は、予備的知見である、Al63Cu25Fe15準結晶合金を前駆物質とした結果を踏まえ、本年度は、各種Al基準結晶合金(Al-Cu-Co, Al-Pd-Mn, Al-Pd-Ni etc)を中心にリーチング処理による触媒調製を行った。その結果、結晶合金を用いた場合よりも準結晶合金を前駆物質とした方が準結晶構造特有の構成金属組成揺らぎによりAlの溶出速度が著しく抑制されるため、より微細なコンポジット相が形成されることが明らかとなった。この微細なコンポジット相が触媒活性相として機能していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Al基準結晶Al-X-Yを前駆物質としてアルカリ性水溶液でAlを選択的に溶出させることで、残されたX-Y原子間の再構成に伴う合金化プロセス(金属間相互作用)を巧みに利用するナノ結晶合金粒子の調製法を確立した点は特筆すべきことである。この調製法のメリットは、従来の合金ナノ粒子の調製法のように金属塩や金属錯体などを使用しないため金属・合金化において構成金属の還元特性の制約を受けずに組成不均一やコア-シェル型ではない均一なナノ固溶体合金粒子が形成できる点である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の検討も継続するとともに、物質構造と触媒特性との相関を系統的に調べることで準結晶構造の触媒作用に及ぼす影響を明確にする。そこで、同一組成合金において、合金の作製・処理法を変えることにより結晶、アモルファス、準結晶の各構造がつくり分けられる合金系を用いる。Al75Cu15V10 (atom%)は、液体急冷するとアモルファスになり、これを熱処理することで結晶(600oC)、準結晶(420oC)のものをそれぞれ作製できることから、この合金試料を用いてリーチング特性や触媒特性の比較を行う。 また、準結晶合金自身の触媒特性も検討する。Ag-In-RE, Au-In-RE系準結晶(Ag42In42(Yb or Ca)16; Au42In42Ca16 (atom%))には構成元素が同じで構造が結晶タイプのいわゆる近似結晶(1/1, 2/1)が存在する。そこで、準結晶v.s.近似結晶の各触媒の反応特性(CO酸化、C2H4酸化・水素化など)を比較することにより準周期構造特有の性質の有無を明確にする。合わせて、各種反応性ガスの吸着特性や反応ガス雰囲気下での酸化・還元特性についても調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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