研究課題/領域番号 |
24656489
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 朋子 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (90283415)
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キーワード | プラズマ照射 / ナノタングステン酸化物 |
研究概要 |
Heプラズマの照射条件を緻密に制御することにより,樹枝状ナノタングステン(幅約数十ナノメートル,長さ約数マイクロメートル)試料を作製した.これらの試料について大気下酸化処理や加熱酸化処理をすることによって,以下の2種類の触媒を調製した. 【触媒1】樹枝状ナノタングステンの表面をWO3膜で被覆した触媒を調製した.大気下で加熱時間と温度を制御し,WO3膜の厚さを数nm~数十nmの範囲で様々に変えた触媒を設計した. 【触媒2】大気下室温で酸化させることにより,試料表面にWO3と金属Wが混在する触媒を調製した.この時,酸化処理時間を変えてWO3と金属Wの組成比が様々に異なる触媒を設計した. これらの酸化処理後の試料についてSEM及びTEM観察を行い,樹枝状構造が保持されていることを確認した.更にWO3膜の厚さを評価したところ,数~十数ナノメートルと見積もられた.膜厚が薄い触媒ほど基盤となる樹枝状構造の影響を受け,配位不飽和サイトも多く,歪んだタングステン酸化物構造が形成されると予想していたが, XAFSによる触媒表面局所構造解析を行ったところ,酸化物はWO3であり,その構造に顕著な違いは認められなかった.また各触媒表面の原子価状態やWO3と金属Wの組成比をXPS測定から決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に即して,研究準備や環境を順調に整えているため,現在のところ計画通りに遂行できたと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に調製したナノタングステン酸化物触媒は,それぞれ表面の局所構造や酸化状態,膜厚が異なるため,光吸収特性(吸光度や吸収波長範囲)が異なることが期待される.各触媒について,紫外~近赤外波長領域の拡散反射スペクトルを測定し,樹枝状構造の変化や酸化処理条件と,光吸収特性との関連性について調べる. 一方,各ナノタングステン酸化物触媒を用いて紫外・可視光照射下で有機化合物の酸化分解反応を行う.反応としては,メチレンブルーの分解を計画している.各触媒の分解活性や生成物の選択性を比較し,触媒表面の局所構造や酸化処理条件が光触媒活性に及ぼす影響について明らかにすると共に,分解反応メカニズムを解明する. 得られた成果に基づいて,紫外から近赤外領域に及ぶ広波長領域応答型タングステン酸化物光触媒を設計する.樹枝状構造と表面酸化状態を緻密に制御すれば助触媒を添加しなくとも高機能触媒が創製できることを実証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究結果に基づき、当初計画していたメチレンブルー分解実験以外にも、新たな反応実験を行い、Heプラズマ照射タングステン材料の光応答性を確認する必要が出てきた。この新たな実験を平成26年度に実施するためには、精度の良い真空計が必要不可欠であるため平成26年度使用額が余計に必要となった。 真空反応ラインを用いたガス分子の光触媒反応実験を平成26年度に追加することを計画している。この真空反応ラインを構築する上で精度の良い真空計が必要であり、この真空計を購入する。
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