本研究課題は、ナノ細孔を持つ結晶性材料であるゼオライトと、その細孔内に存在する有機化合物(SDA)の構造解析を通じ、特定の細孔空間を形成させるために必要なSDAの条件を明らかにすることを目的とした。特定の大きさの細孔空間を得るために必要なSDAの大きさ・形状を見積もることができれば、細孔空間の設計が可能となり、ゼオライトの触媒・吸着剤としての機能の高性能化、最適化が期待できる。 様々な四級アンモニウムをSDAに用いてゼオライトを合成したところ、環状(ヘテロ)アルキル基を持つ四級アンモニウムを用いた場合にケージ(楕円体状細孔空間)を持つLEV型またはCHA型ゼオライトが同じ合成条件下で得られ、長径が大きいSDAからはケージの長径が大きいCHA型ゼオライトが、小さいSDAからは小さいLEV型ゼオライトが得られることがわかった。これらのゼオライトに対してX線結晶構造解析を行ったところ、SDAはその長軸がケージの長軸方向と一致するように細孔内に位置し、ケージと内包されるSDAの原子間距離は0.3~0.4 nmの範囲にあるという定量的な情報が得られた。中間の大きさを持つSDAからはケージを持たない*BEA型ゼオライトが得られたことから、SDAの大きさが、LEV型、CHA型のどちらのケージに対しても前記の原子間距離を満たすことができない場合は、ケージを形成することができず、ケージを持たないゼオライトが結晶化するのだと考えられる。今後はSDAがケージ内でどの程度までの構造的ひずみを許容できるかをシミュレーション計算などにより明らかにする必要がある。 得られた成果は第28回ゼオライト研究発表会および第43回石油・石油化学討論会において報告したが、今後論文として学術雑誌に投稿する予定である。
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