研究課題/領域番号 |
24656494
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
内藤 周弌 神奈川大学, 工学部, 教授 (20011710)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 窒素酸化物貯蔵還元触媒 / 相転移 / 自動車排ガス除去 / ナノ構造触媒 |
研究概要 |
新規NOx貯蔵還元触媒の開発のため、ガスクロマトグラフを購入し、反応速度測定のためのパルス反応装置を完成させた。この装置を駆使してPt-KNO3担持カリウムチタネート(KTN)における酸化還元速度および貯蔵容量に対するKやPtの担持量依存性について検討した。その結果、KNO3の担持量は25~30wt%が最適であり、それ以上多くなるとKTN構造の崩壊をもたらすことが明らかとなった。また、Pt担持量は0.5~1.5wt%までは反応速度の増加をもたらすが、3wt%以上になると逆に速度は遅くなった。これはPtのシンタリングによる表面積の減少が原因と考えられる。 次にアルカリ金属イオンを変化させた結果、K>Na>Rb>Cs>Liという活性序列が得られた。特にNaの場合に、K-KTNと同様のXRDおよびXPSによる検討の結果、Kの場合と類似のアルカリ金属イオンの移動に伴う相転移が貯蔵還元の機構であることが確認された。活性序列はアルカリ金属イオンの拡散速度で説明できると考えられる。また、FT-IRを用い、貯蔵・還元過程におけるKTN触媒表面の窒素種の同定を試みた。その結果、貯蔵時における多量のKNO3の形成がみられるが、同時にbidentateのNO3(a)が観測され、表面Tiイオンも貯蔵・還元過程で重要な役割をしていることが示唆された。この点は今後、Ptのみならず、よりNOx貯蔵を促進すると考えられるCuやCoイオンの添加の可能性を示唆するものである。 KTN以外のK-ニオベートやK-タンタレート,K-バナデートの合成を試みたが、現在までのところKTNほどの高表面積をもつ試料の調製に成功しておらず、今後の最大の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請では以下に述べる理由により、大筋で本年度の研究の目的を達成したと評価する。 (1)完成したパルス反応装置は予算の都合上、十分な時間分解能をもたせることは出来なかったが、分単位の分解能でデータを集めることに成功した。 (2)KTN触媒については、KイオンやPt量の濃度依存性を検討し触媒組成の最適化を図り、1.5wt%Pt-20wt%KNO3-KTN触媒が最大の効率を示すことを明らかにした。 (3)他のアルカリ金属種の活性序列はK>Na>Rb>Cs>Liであり、これはKTNのイオン通過パスにおける拡散速度に依存するものと考察した。また、Naの場合もK同様の相転移による貯蔵還元機構が進行していることを確認した。 (4)触媒表面ではNOx貯蔵時にKNO3以外の窒素酸化物が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の項でのべたように、K-チタネート以外の高表面積材料の調製に全力を注ぐ。同時に規則性を持つナノベルト構造にとらわれず、アモルファスな酸化物担体上での類似の活性点構造の構築の可能性も追及する。また、これらの触媒系の実用化のためには、耐久性の問題も重要である。今後はこの点にもスポットを当てて、検討を続けていきたい。 窒素貯蔵還元触媒の高性能化のめざすところは、貯蔵量の増加と酸化・還元レスポンスの速さにある。この点を念頭において、より低温で作動する高表面積材料の設計が不可欠と思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
「該当なし」
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